『メルカトル』

メルカトル
長野 まゆみ
4479650091


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読了。

リュスはミロナ地図収集館で働きはじめたばかりの十七歳。救済院出身の孤児で進学資金を貯めるために受付係となったかれは、〈お偉いかた〉と名づけられた地図研究を趣味とする老人の相手などをしながら、すこしずつ仕事になじんでいるところだ。そんなある日、リュスは地味ながら特徴のあるまなざし女性の依頼を受けた。有名女優エルヴィラ・モンドと同姓同名の彼女は、リュスに名前を尋ね、かれは自分の名前は配管のゴミ虫の意味を持つのだと答えた。上司から人気モデル・ルゥルゥの出演する番組観覧券を取得するためにガムの購入を依頼されたリュスは、ドラッグストアでアルバイトの女子学生に冷たくされる。収集館には厄介な常連客がいた。とある私立校の制服に身をつつんだ少年で、ころころと変わる偽名を名乗り、ことあるごとにリュスに悪質な悪戯を仕掛けてくる。その日、少年はミロル・メルカトルと名乗りリュスに祖父からだといって身に覚えのない手紙を渡した。




『カルトローレ』が面白かったので借りた本。
とてもかろやかで愛らしい一冊でした。

じつはかなり予想を外した感じです。
タイトルから地図に関する謎が描かれるのだと思っていたのですが、予想の方向が間違ってました。謎は地図ではなかったのね。

孤児で両親に守られることなく育ったリュスはじぶんをまもるために、期待を抱かない、現実をあきらめて甘受するという性質が染みついています。
そんなかれを次から次へと変な人たちが現れては翻弄し、次から次へと苦境に陥らせる、というストーリー。

書きようによっては災難劇にもなりそうな話なのに、リュスが物事を距離を置いて冷静に受けとめるのと、登場人物があまりにも変わっているのとで、どことなくユーモアすら漂う雰囲気があるのが楽しいです。

小物の使い方や、どことなくイベリア半島っぽい感じの異国情緒が、しゃれています。
白い画面のブンガクっぽい少女マンガの雰囲気ですね。

それとこんなに女性の名前がたくさん登場する長野まゆみ作品は初めてかもしれません。
出会う度にリュスにキスを残していく彼女たちの、やわらかな存在感がとても珍しかったです(苦笑。

しゃれた短編映画みたいな趣のミステリ風味の可愛いお話でした。

いろいろとうまく行き過ぎだったり、『カルトローレ』の深みはないけれど、こういうお話は単純にその場その場のシーンを楽しめばいいのだと思います。

ところで冒頭のメルカトルに地図に関する記述は、本当なんでしょうかどうなんでしょうか?

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