『アローマ 匂いの文化史』

アローマ―匂いの文化史
コンスタンス クラッセン アンソニー シノット デイヴィッド ハウズ Constance Classen
4480857443


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読了。


「西洋の歴史における、また非西洋社会における、匂いの文化的役割についてのはじめての包括的研究」。
ニューヨークの嗅覚研究基金から1995年度リチャード・B・サロモン賞を受賞したそうです。

目次は以下の通り。


緒言

序 匂いの意味と力

失われた匂いを求めて
1 古代の香り
 バラ油・シナモン・没薬
 都市の匂い
 家の匂い
 香りに満ちた饗宴
 パレードと香料
 キスの香り
 悪臭の中
 匂いの階級
 戦闘の臭い
 香りによる治癒
 死の匂い
 香料と神々
 形而上の香り

2 香りを追って〔中世から近代へ〕
 聖性の香り
 都市の悪臭
 ペストとポマンダー
 ホーム、スイートホーム
 晩餐の香り
 香る身体
 香りへの讃歌
 嗅覚革命
 想像の香り
 匂いと科学

嗅覚の差異
3 匂いの宇宙
 香りの暦→時間の芳香
 香りのする地図→香景
 匂いのタイプ→嗅覚の分野
 食べられる匂い→食べ物の匂い
 匂いについて語る→言語のなかの匂い
 自己の匂い→匂いとアイデンティティ
 事物の匂い(秩序)→オスモロジー
 色・響き・匂い→感覚の結びつき

4 匂いの儀礼
 ジャスミンの笑い→匂いの美学
 神々のためのタバコ→匂いによる霊との交流
 白檀・砂糖・鰐の爪→匂いの通過儀礼
 ヤム芋の鼻→狩猟採集の匂い
 薬湯と薬草吸入→アロマテラピー
 腐った人間の舞踏→儀礼の匂い
 匂いのある夢→夢と幻における匂いの役割

 匂い・権力・社会
5 匂いと権力〔匂いをめぐる政治学〕
 性(ジェンダー)のエッセンス
 階級の匂い・民族の匂い
 臭いによる汚染
 アウシュヴィッツの臭い
 よい香りのユートピア

6 商品の香り〔香りの商業化〕
 体臭,香水
 香る製品
 人工香料
 トレードマークとしての香り
 嗅覚→ポストモダンの感覚?

参考文献
訳者あとがき
索引




「包括的」と断ってあるとおり、内容は総まとめ的なものが多いですが、それでも匂いは研究に値する事柄だと受けとめられてこなかったためでしょう、想像もしなかった眼から鱗な事実がかなりありました。
面白かったです。

現在の実情からすると想像もつかない古代世界の豊かな香り文化の話は、へえええの連続。
染織が臭いということはおぼろに知ってましたが、「貝紫で染めた布が強烈に臭いのでそれを消すために香を焚きしめていた」なんて……知らなかった。
もしかして、だから貝紫は金持ちしか着られなかったのか? それで高貴な色になったのか? いや、多分染めも難しくて貴重だったんだろうけれども、そのうえに香を買えないと着られないものだったのかもと思うとなにやらとても感慨深いではありませんか。

中世のヨーロッパは不潔であるというのは定説ですが、そうなった理由もへえええ、でした。
入浴が忌み嫌われたために服は身体を清潔にする役割も持たされていたとは。
そして、いきつくところまでいくと聖人は垢まで敬われてしまうという時代です。そんな時代に生まれなくてよかった(汗。

そんな臭いの充満する西洋に対し、そのころの日本はどうだったんだろうなあ。

と思いましたが、日本についてはまったく触れられておりません。
この本で扱われている非西洋社会は、西洋とは反対をいくような特徴のあるものを選んでとりあげてあるような感じです。
これもとても面白かったんですが、面白すぎて実感が湧かない部分が多々ありました。記述が少ないのでよけいにわかりにくかったのが残念です。

印象に残ったのは、匂いを重視する社会でも基準が成人男性の香りになっていることが多いなあということです。

それから、他者に対して嫌悪をおぼえるほど不快な臭いを感じてしまうという心理的な罠。
そして人間は不快な臭いを蔑む性質を持っているらしいです。

西洋人が先住民を臭いと感じていた時、先住民も西洋人を臭いと感じていたという事実には、皮肉な笑いがこみあげてきました。

人間は知らない匂いには敏感だけど、慣れてしまうとそれを意識しなくなってしまうんですよね。

身近な実例として、近所のペット飼育家庭が思い浮かびました。
側を通るととくに雨降りの日などは強烈な臭いが鼻をつくんだけど、そこに住んでるひとにはたんなる自分の家の臭いなんだろうなあ。

そこをもうすこし詳しくとか、他の地域はどうなってるのとか、いろいろと残念な部分はありましたが、初めて読む匂い本なのでこれくらいでよかったのかもしれません。

コロンビアのデサナ人や、マレイ半島のバテク・ネグリト人など、非西洋社会の匂いに関してはもうすこし詳しく知りたいなと思いましたがなにかあるかな。

アラブ首長国連邦のことなら情報があるかもしれないなーとも思いました。
関係ないけど、この本でアラブ首長国連合って訳されてるのにはなにか意味があるのでしょうか。

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