『赤い星』

赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
高野 史緒
4152089504


[Amazon]

読了。

ネットの発達した時代、帝政ロシア支配下の江戸の人びとがペテルブルグを夢見る、歴史改変SFファンタジー。


ネット技術のみが発達した時代。帝政ロシア支配下の江戸でハッカーをして生計を立てている娘おきみは、ピアニストになるべく旅立った幼なじみ龍太郎に想いを寄せて、かれがいるはずのペテルブルグのネットゲームの偽物に夜な夜な入り浸っていた。そんなある日、おきみは、友人の花魁・真理奈太夫から不審な頼みを受ける。秋葉原に出没するロシア皇子ドミトリーを名乗る若者を調べて欲しいというのだ。真理奈太夫は自分が公方の御落胤であると信じており、ドミトリーをつかって賭けに出ようとしていた。おきみは幕府の家老シュイスキー公爵から偽ドミトリーにかかわるなと警告を受ける。




猥雑で胡散臭くていきいきとした江戸の喧噪と、絢爛豪華で陰鬱で寒々しいペテルブルクのコントラストが印象的な、不思議な雰囲気のお話でした。

下敷きにあるのは「ボリス・ゴドゥノフ」なのかなーと思いましたが、無念なことに未読なので、いまいちそのあたりのおもしろさはわからずじまい。

それと、シャッフルされてるのか、リピートされてるのか、よくわからないロシアの歴史と、天人(あまんと)がロシアに代入された『銀魂』みたいな江戸の街が、不協和音寸前の興味深さでわたしを惹きつけました。

シベリア横断ウルトラクイズの苛酷さに笑い、龍太郎のバレエ団での仕事に興を覚え、ニジンスキーの登場には『ヴァスラフ』を思い出そうとして失敗し、しかし、物語はその場の雰囲気を描く文章以上にはならなかったような気がします。

つまり、「この世界はいったいどうしてこうなってるの?」という疑問がこの本の最大の面白さだった。

ペテルブルクへの憧憬が最後まで他人事だったわたしには、その理由はちょっと肩透かしだったかも。

いろんな要素がぎゅうぎゅうに詰め込まれた力作なだけに、もう少し遠回しでなく直接に踏み込んで骨格部分もがんと書いてしまってもよかったんじゃないかなーと思いました。

余談。
上にも書きましたが、『ヴァスラフ』はこの作品と関係あるのかなーと気になっております。読んだのがずいぶん前なのでもう全然思い出せないのです。たしか、ニジンスキーとネットが出てきたように思うんだけど。

それと『ボリス・ゴドゥノフ』の内容を知りたい、かもしれない(なに、この煮え切らない態度;)。

ヴァスラフ
高野 史緒
4120028410


ボリス・ゴドゥノフ (岩波文庫)
プーシキン Пушкин
4003260457

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)