『クシエルの啓示 2 灼熱の聖地』

クシエルの啓示〈2〉灼熱の聖地 (ハヤカワ文庫FT)
ジャクリーン ケアリー Jacqueline Carey
4150205191


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読了。

高級娼婦兼間諜として育ったヒロインの波瀾万丈の運命を描く、中世ヨーロッパ風異世界歴史ファンタジー。三部作の第三部第二巻。

面白かったです!

想定外の人物の想定外の頼みに、つい誓いを立てて受けてしまったフェードル。
探索の果てに古代エジプトっぽいメネケット王国までたどり着いたのが前巻まで。

この巻ではさながら『三大陸周遊記』のような異文化体験のつづく旅行と、狂気と破壊の支配する国ドルージャンでの試練がメインでした。

メネケットからの旅は、その名の通りチグリスとユーフラテスを渡河する古代オリエントの旅です。
たどりつくのはケベル・イム・アッカド王国。現在ならばイラクの位置ですが、文化はアッカド時代ではなくどうみてもアラブのイスラーム王朝。しかして信仰するのはイスラームではないという、珍妙な王国です。

アッカドにはバルクィール・ド・ランヴェールの娘ヴァラールが王子の妃として嫁していて、フェードルたちは彼女の援助の元に謎の、そして悪の王国ドルージャンへと潜り込むことになるのでした。

ドルージャンの成立にはアッカドによる残虐な侵略がかかわってるのですが、暴力によってまかれた種が萌芽し結実した怒りと狂気そのものがマハールカギール王であり、この暗黒王国かと思うと、やるせなさを禁じ得ません。

アッカドの侵攻には歴史的な大侵略の数々をおもわずにいられませんが、このドルージャンには世界のあちこちに生まれている過激派テロリストが反映しているようなきがしました。

病んだ王国の後宮に潜入したフェードルが、任務を遂行するために出会う狂気の凄惨さはぼかして書いてありますが辟易しました。彼女が耐えられたのはアングィセットであるからだけど、ヒロインの味わう苦難としては酷すぎるような気すらした;

はしばしにあらわれるエルーア様の存在に、これまでになくファンタジーぽいお話になってましたが、それだけの魂の危機が書かれていのだと思います。

途中でヘラス人がフェードルを呼ぶ名前の意味がわかって、うへえと思いました。神様って自分勝手で残酷。

それにジョスランの苦悶が可哀想でねえ……。
いままでもずっと虐げられてきてそれで成長してきた感もあるキャシリーヌ修道士の彼ですが、ここまでいじめなくてもいいんじゃないのと、思ってしまいましたよ、はあ。

救いは、フェードルたちが救出しようとした少年が、随所で母親に似ているにも関わらずとても健全な精神の持ち主だったことでしょうか。

奥(ゼナナ)と呼ばれる後宮の女たちの多彩な個性も興味深かったです。

鬼気迫るドルージャン編をぬけたあとでは、疲れてしまってしばらくつづきが読めませんでした;
というか、もうここで終わってもいいんじゃないかとまで思いましたが、そういえばまだ未解決の件が残ってたんだった。ごめんすっかり忘れていた。

その後のナハール(ナイル)川クルーズを経て、サバンナの動物やらなにやらの見聞録に、ちょっと気が抜けたというのもありますが。

「長いといったって、ここまでほどじゃないさ」とジョスラン。「戻りだって、これほどかかるわけがない」



のくだりに、ああもうすぐこの話も終わるんだーと、ちょっと寂しくなりました。
完結編は手違いで二巻よりも先に手元に来ていたので、すみやかに読むことといたします。

クシエルの啓示 3―遙かなる道 (ハヤカワ文庫 FT ケ 2-9)
ジャクリーン・ケアリー Chiyoko
4150205221

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