『クシエルの啓示 3 遥かなる道』
クシエルの啓示 3―遙かなる道 (ハヤカワ文庫 FT ケ 2-9)
ジャクリーン・ケアリー Chiyoko

[Amazon]
読了。
高級娼婦兼スパイとして育てられたマゾヒストのヒロインが、重い使命を果たすために命をかけて旅をする、古代から近代までの地中海文化圏ふうの異世界歴史ファンタジー。三部作の第三部、完結巻。
終 わ っ た ………。
最後まで波瀾万丈、そして危機一髪、精神と肉体の極限まで追い詰められてなおもくじけないヒロインの粘り強さがたいそう印象的なシリーズでした。
ヒロインの祖国テールダンジュの崇める聖エルーア様のお言葉が、しみじみと感じられたなー。
この話のテーマは愛と自由だったんじゃないかと、いまわたしは考えてます。
読んでいる間には大きな災害があり、日本にかつての日常はもう戻ってこないのではないかと思わされる不安な日々でした。
そのあいだ、愛と憎しみ、信頼と裏切りに彩られたこの物語を読んでいて、いろいろと考えることがありました。
信仰について、愛について、がいちばん多かったような気がします。
とくに第三部は、抑圧された心の生み出す闇と桎梏についてのエピソードが多く、恐怖がどれだけ心を縛るか、それがどれだけ他者への不寛容となってあらわれるかをまざまざと見せつけられました。
他者を恐れ、自分を自分で抑圧し、がんじがらめになったこころを癒すのは、並大抵のことではありません。でも、それができるとしたらそれは愛なのかもしれない。
他者の自由を純粋に願えるのは、愛によってだけなのかもしれない。
その点で、フェードルの痛みに強いマゾヒストという設定は、苛酷な状況で自体を打開するための必須要素だったんですね。
という言葉はフェードル自身をあらわすとともに、そうあれかしと願う作者さん自身の思いなのかもしれないなと感じました。
劇的な歴史小説でありつつ、ヒロインが愛を知り、愛を得るための人生の道のりを描いた作品でしたね。
フェードルとジョスランの間柄の変遷は、夫婦小説といった趣もw
ジョスランがキャシリーヌ修道士から生身の人間として解放されていく姿は、いろいろと素敵でした。
三部作の完結編は、第一部、第二部のサスペンスフルでドラマティックな終幕と比べると、かなりゆとりをもった展開でした。劇的な部分もきちんとありますし、それはこのシリーズの最大のクライマックスでもっともファンタジー的な部分でもあったのですが、えーと、、、ドルージャンのあとだとなんでも普通に見えてしまうのが残念ですねw
むしろ、これまでの物語をいろいろとふりかえる部分が多くて、それがしみじみと感慨を誘いました。
番外後日譚でもいいんじゃないと思うような部分をすべて本編に組み込んでしまうのも、このシリーズの特徴ですね。
わたしにはちょっと冗長に感じられるのだけど、読んでいて楽しいし(とくにジョスランの服装w)、安心感のあるかたりではあります。
そして、勝ち取った平和を言祝ぐラストシーン。
長い道のりが終わったのだなあと、この話も終わってしまったのだなあと、すこしの寂しさとともに満足に浸りました。
波瀾万丈の物語をお求めの方にお薦めですv
文化的な設定や歴史的時系列などに神経質にならず、素敵な素材として楽しんでいただければと思います。
ところで、シリーズには続編があるそうで、その主人公はイムリールだとか。
ぜひぜひ、翻訳刊行していただきたいものです。
ヒーローがイムリなら、ヒロインはだれなんだろうと、妄想が止まりませんw
シリーズ開幕編はこちら。
このころのフェードルはまだ子どもだったですねえw
クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)
ジャクリーン ケアリー Jacqueline Carey

ジャクリーン・ケアリー Chiyoko

[Amazon]
読了。
高級娼婦兼スパイとして育てられたマゾヒストのヒロインが、重い使命を果たすために命をかけて旅をする、古代から近代までの地中海文化圏ふうの異世界歴史ファンタジー。三部作の第三部、完結巻。
終 わ っ た ………。
最後まで波瀾万丈、そして危機一髪、精神と肉体の極限まで追い詰められてなおもくじけないヒロインの粘り強さがたいそう印象的なシリーズでした。
“汝、凋れるまで愛を尽くせ”
ヒロインの祖国テールダンジュの崇める聖エルーア様のお言葉が、しみじみと感じられたなー。
この話のテーマは愛と自由だったんじゃないかと、いまわたしは考えてます。
読んでいる間には大きな災害があり、日本にかつての日常はもう戻ってこないのではないかと思わされる不安な日々でした。
そのあいだ、愛と憎しみ、信頼と裏切りに彩られたこの物語を読んでいて、いろいろと考えることがありました。
信仰について、愛について、がいちばん多かったような気がします。
とくに第三部は、抑圧された心の生み出す闇と桎梏についてのエピソードが多く、恐怖がどれだけ心を縛るか、それがどれだけ他者への不寛容となってあらわれるかをまざまざと見せつけられました。
他者を恐れ、自分を自分で抑圧し、がんじがらめになったこころを癒すのは、並大抵のことではありません。でも、それができるとしたらそれは愛なのかもしれない。
他者の自由を純粋に願えるのは、愛によってだけなのかもしれない。
その点で、フェードルの痛みに強いマゾヒストという設定は、苛酷な状況で自体を打開するための必須要素だったんですね。
屈服させられた者は、いつまでも弱くない。
という言葉はフェードル自身をあらわすとともに、そうあれかしと願う作者さん自身の思いなのかもしれないなと感じました。
劇的な歴史小説でありつつ、ヒロインが愛を知り、愛を得るための人生の道のりを描いた作品でしたね。
フェードルとジョスランの間柄の変遷は、夫婦小説といった趣もw
ジョスランがキャシリーヌ修道士から生身の人間として解放されていく姿は、いろいろと素敵でした。
三部作の完結編は、第一部、第二部のサスペンスフルでドラマティックな終幕と比べると、かなりゆとりをもった展開でした。劇的な部分もきちんとありますし、それはこのシリーズの最大のクライマックスでもっともファンタジー的な部分でもあったのですが、えーと、、、ドルージャンのあとだとなんでも普通に見えてしまうのが残念ですねw
むしろ、これまでの物語をいろいろとふりかえる部分が多くて、それがしみじみと感慨を誘いました。
番外後日譚でもいいんじゃないと思うような部分をすべて本編に組み込んでしまうのも、このシリーズの特徴ですね。
わたしにはちょっと冗長に感じられるのだけど、読んでいて楽しいし(とくにジョスランの服装w)、安心感のあるかたりではあります。
そして、勝ち取った平和を言祝ぐラストシーン。
長い道のりが終わったのだなあと、この話も終わってしまったのだなあと、すこしの寂しさとともに満足に浸りました。
波瀾万丈の物語をお求めの方にお薦めですv
文化的な設定や歴史的時系列などに神経質にならず、素敵な素材として楽しんでいただければと思います。
ところで、シリーズには続編があるそうで、その主人公はイムリールだとか。
ぜひぜひ、翻訳刊行していただきたいものです。
ヒーローがイムリなら、ヒロインはだれなんだろうと、妄想が止まりませんw
シリーズ開幕編はこちら。
このころのフェードルはまだ子どもだったですねえw
クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)
ジャクリーン ケアリー Jacqueline Carey

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