『竜が最後に帰る場所』

竜が最後に帰る場所
恒川 光太郎
4062165104


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読了。

幻想短篇集。


風を放つ
迷走のオルネラ
夜行の冬
鸚鵡幻想曲
ゴロンド



『夜市』や『草祭』の作者さんの現代日本を主な舞台とした不思議な風合いの短篇集です。

ファンタジーという言葉のイメージよりも暗くて不穏な、浄化作用を目的としていない、夢であるなら醒めて欲しい系の話が多いです。

この特有な雰囲気、なにかに似ているなあとずっと思ってきたのですが、誤解を受けるかもしれないけど、新聞の社会面の記事に似ていないでしょうか。

現実に存在していると知識では理解しているけれど、自分が直面したらいやだなという事件です。

とくに「迷走のオルネラ」。
これを読むと、事件というのは現実であっても当事者にとっては夢のように計りがたく、制御不能で、物事を支配するルールの理解できないままに命の危険にさらされるものなのだなと感じます。

もしかして、不思議な出来事というのももとを正せば現実なのではと思ったりしました。
理解できないことは現実ではないと、感じた恐怖と不安を落ち着かせ、納得するための装置が幻想だったのかなとか。

これまではあっちに行きっぱなしの話が多い印象でしたが、今回、現実に着地する話が多かったのでよりいっそうそんな空気が濃厚だったのかもしれません。

そんなわけで、読んでいる間の気分はすごく不安で、居心地が悪く、ときに悪夢を見ているようでしたが、読後感はけっこうよかったです。

“あるべき”日常が戻ってきた時の安堵感といったら、なんともいえません。

幻想の部分が独創的なのも好きです。とくに「鸚鵡幻想曲」。薄気味悪いことこのうえないので好きというのは語弊があるかもしれませんが;

多分わたしは、この作家さんの現実と幻想が地続きの雰囲気が好きなんだろうなーと思います。

なかで異色だったのは、最後の「ゴロンド」。
竜の視点で世界を描く佳品です。

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