『戦闘妖精・雪風』

戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫 JA 183)
神林 長平
4150301832


[Amazon]

読了。

近未来。突如襲ってきた異星体ジャムとの戦いのために組織された軍隊FAFで、戦闘機・雪風に搭乗する深井零中尉を中心に、高度に発達した電子機器=コンピュータと人間の関わりを描く、SF連作短篇集。

1984年刊行の旧版です。
続編を借りたけれども前作を思い出せないという情けない理由のために再読しました。

再読してよかったです。
ほんとうにまるきり話を覚えてなかったし、それだけ覚えていないということは読んだ時にたいした感想を抱けなかったからだと思われるし、今読んでみたらちょっと驚いてしまったほどの世界がここにあって、感応できなかったままの自分でつづきを読んでいたらとてももったいないことだったと思われるので。

つまり、以前のわたしはこの作品の何を読んでいたのかと、今のわたしは思うわけですが、まあ、いいや。わたしも成長したんだということにしておきます。二十数年かけてね……。

そう、二十数年経ってるわけですよ、初読時からは。
最近読んだゼロ年代SFの作品から、この作品の影響がどわーっとあふれるように感じられるのも不思議ではないです。

いまは常識になっている設定が、二十数年前にすでにあった。
しかも、今読んでもほとんど古びていない作品として出来上がっていた。
このことに当時気づいていたら、そりゃあ、衝撃だったでしょうねえ……。

つまり、わたしはSF感度のひくーい人間だってことなんでしょうね。
あと、わたしが惹かれるのはまず文章と雰囲気だということも原因だったかも。や、言い訳ですね;

短編の連作として掲載された作品をまとめたものなので、それぞれに独立した話として読めます。
以下、目次。


FAF・特殊戦隊
Ⅰ 妖精の舞う空
Ⅱ 騎士の価値を問うな
Ⅲ 不可知戦域
Ⅳ インディアン・サマー
Ⅴ フェアリイ・冬
Ⅵ 全系統異常なし
Ⅶ 戦闘妖精
Ⅷ スーパーフェニックス

〈雪風〉概説

解説/野田昌宏



読んでいるうちに、敵の正体とか敵が相対しているのが誰かとかの事実が明らかになってきて、あらたな、そして衝撃的な世界が目の前にひらけてきます。

機械は自我を持ちうるのか。
持ったとしたら人間をどう認識するのか。
人間は機械に置き去りにされるのか。

社会性のない、機械に依存する主人公という設定が、このテーマを鮮明に浮きあがらせているなあと思いました。

機械の自我というテーマは、いまのSFでは人間の自我そのものの問題とも相まって繰り返し出てくるテーマになってます。その点がすごい、と思うのです。

とはいうものの、再読してみても主人公にはあまり共感できなかったですが。

というより、登場人物全員に共感できなかった;

あー、そうか。
初読時のわたしにはこの話が絵空事にしか感じられなかったんだわ。

今回も、わたしは「フェアリイ・冬」にもっとも説得力を感じました。なぜかというと、たぶん肌感覚が描かれているのがこの話だけだからです。おそらく、作者さんの実体験が物を言っているのだと思われます。

小説だから絵空事を書いてるのは当たり前なんだけど、その絵空事を実感させるのが小説なんだとわたしは思っているらしいです。

ということは、わたしは今になってようやくこの世界を実感できるようになったてことなのか。
二十数年前、コンピュータはまだ一般人の日常ではありませんでした。
しかしいまやパソコンはどこにでもあふれていて、ネットに簡単に接続することも出来ます。

わたしにとって読むべき時が来た、今が旬、てこと?(笑。

それと、小説という形態で作られたものは、けっこう古びないんだなと感じました。
この作品はディテールの描写が少ないからよけいに鮮度が落ちないのかも。
これがもし映像作品なら、あっというまに時代遅れになってると思います。

というわけで、つづけて続編を読みたいと思います。

つづきはこちら。
グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)
神林 長平
4150306834


ところで、今回は家にあった旧版を読みましたが、今は改版が流通しています。
こちら。
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)
神林 長平
4150306923

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)