『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)
神林長平
4150310246


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借りて読了。

謎の異星体ジャムとの戦いを、人間と機械との関わりなどとともに描くSFシリーズ、第三弾。
『グッドラック 戦闘妖精・雪風』のつづき。

う、は、あ。

前巻でジャムと戦うために雪風とともに飛び立っていった深井零大尉。
本格的なジャムとの抗戦が開始されるのか、と思っていたところ、本作はジャムによる地球人への宣戦布告から始まります。それも、思いもよらない形での。

ロンバート大佐が代筆する?ジャム宣戦布告を受けとったジャーナリスト、リン・ジャクスン視点の話に、少しの違和感を覚えたわたしは、それからつぎつぎに現れる登場人物視点の物語に驚きました。

これまでのこのシリーズで、ここまで登場人物の個人情報に踏み込んだことはなかったから。

その後、視点はフォス大尉、ブッカー少佐、桂城少尉……とめぐっていきますが、いままでメタルカラーだった話がいきなり人間の話になってとまどっているあいだ、話の内容はえらく形而上的になっていて、意識は言葉によって生ずるとか、人の見ている世界はそれぞれ別の世界だが、それとは異なる真の世界があるとか、哲学論議のような会話がつづくので、ちょっと……いやかなりわたしには苦労する展開でした。

ロンバート大佐のいうジャムの世界ってイデアの世界かなあ……とぼんやりと思う程度;

あと、法則性の見えないままに時間が交錯したり、空間移動したりして、それも疑問の山を築きます。

この世界、どうなってるの。明らかにヘンなんだけど、それってジャムのせいなの。これがすでにジャムの攻撃なの。

と混乱しているうちにいきなり啓示のように悟る人物が現れて、驚愕の現実があきらかに……!

そのとたん、『敵は海賊』シリーズを思い出してしまったのですが、えーーと、よくは思い出せないので断言は出来ないのですが、あちらもそういうテーマじゃなかったでしたっけ?

『雪風』シリーズが個性的なのは、機械をあくまでも機械として扱ってけして人間的な疑似人格を与えたりしない、ようするに擬人化しないってところかなーと思います。

人間とはまったく異なる存在である機械とジャムの異質さと分けの分からなさ加減は、わたしにはひどく異界的に思えます。
でも、ファンタジーではなくSFであるこの話は、異質なかれらのもつ独自のルールを推測し、検証していく過程を知的に楽しむ話ですね。情動とは関わりなのない、純粋に頭で読み、考えてゆく話だなあと感じました。

面白いけど、好みかと問われるとむむむ。
わたしとしては今となってはむしろ、第一作の暗く孤独でひねくれた世界のほうに趣を感じます。
そして知的な遊びとしては「敵は海賊」シリーズのほうが突き抜けてて読んでて楽しかったような。あちらにはアプロがいるからかもしれませんがw

ところで、このシリーズ。なんだかまだ続きそうなんですが。
つづきそう、ということはわかるけど、どうなるかという方向にはまるきり想像力が働かないのが凄い。

新作を読む度にびっくりするという点ではやっぱり凄いSFだよなーと思いましたです、はい。


というわけで、一作目はこれです。
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)
神林 長平
4150306923

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