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『夏至の森』

夏至の森 (創元推理文庫)
パトリシア・A・マキリップ 原島 文世
4488520146


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読了。

古いしきたりを守る一族から距離を置こうとしていた女性が、故郷に戻って出自と向かい合う、現代ファンタジー。



都会でひとり書店を営む女性シルヴィアに祖父リアムの訃報が届いた。葬儀のために七年ぶりに故郷に戻ったシルヴィアは森にかこまれた古くからのリン屋敷を守る祖母と、子どもの頃、祖母から与えられた、人ならぬものとの邂逅をつづった曾曾曾祖母ロイズの手記に再会する。シルヴィアの母は若くして亡くなり、父親は不明。シルヴィアは自分が父親から受けついだものを恐れ、故郷から逃げていたのだ。祖父の葬儀が終わり、アイリスは屋敷をシルヴィアにという遺言を披露した。なんとか受け入れまいとするシルヴィアだが、そんなおり、従弟のタイラーが森に飲まれ、替わりに取り替えっ子が屋敷のなかに入りこんできた。




マキリップの現代ファンタジーは、初めて読みました。
といっても、この作品は『冬至の薔薇』の続編。話は単独でも読めますが、できれば前作を知っていた方が物語の背景や登場人物たちの心情がよりわかりやすくなるのではと、思われます。

本を見失って前作の記憶がすっとんだまま読んだわたしが言うので確かです;

舞台はたぶんアメリカ。
異界とこの世の狭間で結界を張ってきたリン屋敷の女主人アイリスとその孫シルことシルヴィアの関係を軸に、決壊のほころびから勢力を伸ばしてきた異界のものと人間たちの接近遭遇が、幻想的に描かれています。

ほのめかしや隠喩によってひそやかに進んでいく物語は、地下を流れる伏流水のようでなかなか表に現れず、ときおり吹き出す泉やささやかなしぶきが登場人物の目を通して描写されていく。

詩的な言葉遣いにはハッとさせられることしばしば。
とてもまわりくどいのだけど、秘め事を描くにはふさわしい描き方なのかなと思います。

季節が夏だからなのか、『冬至の薔薇』と違いとても色彩がゆたかで、空気が香ばしく、世界がたおやかに感じられることに驚きました。

田舎の女性たちの針の会は、どことなくシャーロット・マクラウドのコージーミステリが思い出されました。
女性たちはいつも表立たないところで重要な役割を担っている気がしますw

前半、ものごとが水面下でうごめいているあたりがかなり長かったので、わりとあっけない収束にやや拍子抜けしましたが、夏の女王様のうるわしいお姿にはうっとり。

アメリカなのにスコットランドの伝承で全部を説明しちゃうの? とかいう疑問はうっちゃっておくことにいたします。

余談。
しばらくマキリップの翻訳が読みにくくて辛い思いをしましたが、この本はわりとするりと読むことができました。

前作はこちら。
冬の薔薇 (創元推理文庫)
パトリシア・A・マキリップ 原島 文世
4488520103

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