『魚舟・獣舟』

魚舟・獣舟 (光文社文庫)
上田 早夕里
433474530X


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借りて読了。

骨太かつ現代的なSF中短編集。

評判がいいようなので気にかけていたら持ってる人がいたので借りてみました。

これはすごい!

まぎれもなくSF。なのに血肉をそなえた人間の体臭すら漂ってきそうな濃厚な身体感覚と社会の猥雑さが味わえます。

先日とても形而上学的なSFを読んだばかりなので、よけいに違いを感じました。
ひとくちにSFといっても、いろんな作品があるよなあ。

収録作品は以下の通り。


魚舟・獣舟
くさびらの道
饗応
真朱の街
ブルーグラス
小鳥の墓

解説 山岸真



タイトル作はスケールの大きな近未来短編。長編『華竜の宮』とおなじ世界が舞台です。
次第に明らかになる人類の未来がグロテスクでした。

「くさびらの道」はバイオハザードを描いたホラーSF。

「饗応」はとちゅうでくるりと世界がひっくり返る未来SFショートショート。

「真朱の街」は妖怪の出てくるホラーSF。人ならぬものの捉え方がとてもSF的でした。

「ブルーグラス」は環境破壊の進む近未来を舞台にしたダイビングSF。

そして圧巻だったのが中編の「小鳥の墓」。

この話に関してわたしは語る言葉を持ちません。
SFであると同時にサイコホラーでもあるように思います。
規制されたクリーンな社会のゆがみと猥雑な外の世界の広さとの対比が強烈。
こんなに生々しい話がSFになるとはねえ。
雰囲気はSFよりもハードボイルドとか社会派ミステリに近かった。
もう、気力体力両方なくしたヘタレなおばさんにはきつかったです。
でも、二十年くらい昔に読んでたらものすごくはまったろうなーとも思う。

読み終えて、なんという後味かと思いましたが、解説に長編『火星ダーク・バラード』のスピンオフとあって、それでかーと納得しました。

社会問題をストレートに反映したシビアな世界を読みたいSFファンにお勧めです。
小松左京賞でデビューされたそうですが、たしかにそうだなと納得。

しかし、ハッピーになりたいひとには、お勧めいたしません;


華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
上田 早夕里 山本ゆり繪
4152091630


火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)
上田 早夕里
4758433720


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