『薔薇と茨の塔 上 エリアナンの魔女5』

エリアナンの魔女5 薔薇と茨の塔(上) (エリアナンの魔女 5)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198631468


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読了。

シビアでハード、かつ魔法の香りがムンムンな古代スコットランド風異世界ファンタジー、三部作の第三部上巻。


海の異形フェアジーンの妖術師マヤによって専横されていたエリアナンの玉座を奪い返した前王の弟ラクランだったが、魔女と妖精排斥を続けたマヤの政策は全土に浸透しており、ひとびとはなかなかラクランの元に下ろうとしない。さらにアランの女藩公マルグリットの手引きによる〈光の国〉ティルソワレーの侵略とフェアジーンの侵攻もつづき、ラクランの不安と怒りに危険を感じたイサボーはブロンウェンをつれてルースシャーの城を逃げ出した。そんなおり、マヤ女王と赤子の王女ブロンウェンを世継ぎとして擁立する〈大捜索官〉レンショーの反乱が起き、イサボーは裏切り者として疑われるようになる。




進めば進むほど過酷になっていくイサボーの運命にかわいそうになってしまう第五巻でした。
最初は好奇心でいっぱいの能天気な苦労知らずの娘だったのにねえ……。
彼女の味わう苦労はすべて身になっているとはいえ、容赦なくからだに刻まれていく傷の数々に、痛みを覚えずにいられません。
メガンの愛情故に無防備に育ったのがイサボーの悲惨の始まりだったのでしょうが、でも、はじめからビシバシ鍛えられて警戒心たっぷりだったら、馬のラサールとここまで接近できたかわからないし、マヤと親しくなったりもしなかっただろうし、するとプロンウェンにここまで思い入れる事もなかっただろう。ということはすべては物語上の必要性ということなのか。

それにしてもここまでヒロインに厳しい物語も珍しいような気がする。
はっきりいって、これが児童書枠で出ているのが不思議です。

それはそれとして、物語は、これって本当にスコットランド風なんだなあとしみじみするようなモチーフや小道具がたっぷりと仕込まれていて、もしかして作者さんは自分のスコットランド神話・伝説をつくりあげたかったのではなかろうかと思ってしまうくらいに徹底しています。

迫害を逃れてたどり着いた別の星にスコットランドの異形がたくさん暮らしてましたなんて、古代スコットランド人の精神世界をそのまま再現したいが故につくった設定としか思えない。

すごく緻密に設定してあるようなのにあまり親切とはいえないそれぞれの氏族の描かれかたからして、わかるひとが読めばすぐわかる元ネタがあるのだろうな。

スコットランドにはあまり詳しくないわたしもときにあれと思うので、ファンタジー初心者には不向きな話なのではなかろうか。

そんなマニアックな話をいきなりどんとシリーズ刊行してしまう出版社。すごい。というか、売れてるのでしょうか。心配です。

とはいえ、そんな魔法と伝説の香りがむんむんと濃厚なお話を、わたしが気に入らぬはずがないのでありまして。

イサボーの転落人生? も含めて、この話のただよわせる雰囲気には病み付きになりそうです。
この巻で初めてあきらかになるイズールトの育ったカンコーバンの暮らしにもわくわくしたし、木成りリランテの立ち会う夏至の祭りの美しさは感涙物でした。

それにしても、残り一冊でこの話まとまるんでしょうか? 本当に?

イサボーの真の力と、ティルソワレーを引き入れる女藩公マルグリットの真意だけはあきらかにしてほしいです。
なんだか信用していない書き方になってしまいましたが、翻訳は井辻朱美さんなのでその点では信頼しきっております。

最終巻は世間的には刊行済みです。
はやく図書館に入れ~!!!

エリアナンの魔女6 薔薇と茨の塔(下) (エリアナンの魔女 6)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198631476

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