『妖精の女王』

妖精の女王 (創元推理文庫)
メリッサ・マール 相山 夏奏
4488544029


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読了。

現代アメリカを舞台に妖精王に見初められた少女の恐怖と葛藤と成長を繊細な筆致でえがく、アーバンファンタジーロマンス。シリーズの第一作。


アッシュリンはフェアリーを見ることができる女子高生。両親はいず、同じ資質を持つ祖母にフェアリーの注意をひかないようにと教え込まれて育てられてきた。警戒心の強さのためボーイフレンドのセスとの距離も友達止まりのアッシュリンはそんな日々を窮屈に感じはじめていたが、町をうろついては悪さをするフェアリーへの恐怖はそれに勝った。ところがある日、彼女の前にそれまでみたことのない強い力を持つ若い男のフェアリー、キーナンがあらわれ、近づいてきた。祖母直伝の撃退法をことごとく突破してアッシュリンを執拗に追い続けてくるキーナン。アッシュリンはキーナンの理由のわからない執着とかれに対すると起きる自分の反応に怯えて、次第に追いつめられていく。




妖精界におけるサマーキングとウィンタークイーンの争いに終止符を打つというサマークイーン。
サマークイーンはサマーキングに見初められた娘が、ウィンタークイーンの課す試練に打ち勝ったときに初めてなることのできる存在です。

この話は、次代のサマークイーンとして目をつけられた少女が、サマーキングに骨抜きにされそうになりながらも自分の自由意思を保ち続け、課された試練を受け入れていく過程をたどりつつ、二組のカップルの恋愛を描いていくお話です。

といっても主役はアッシュリンなので彼女の恋愛がメインなんですけどね。

ここの妖精界には三つの宮廷がある模様です。
サマーキング・キーナンの支配するサマーコート。
ウィンタークイーンでキーナンの母・ベイラの支配するウィンターコート。
そして得体のしれない闇妖精の集うダークコート。

キーナンがアッシュリンを切望するのはウィンタークイーンに力を封じられてしまったから。
かれの力が弱まっている間に世界の均衡が崩れ、人間の世界も滅びへと向かっている、とかれは認識しています。伴侶としてサマークイーンを得なければ封印は破れず、ウインタークイーンに対抗することができません。

キーナンはアッシュリンの前にも幾人もの娘をサマークイーン候補として見初めていますが、そのすべてが試練を拒否するか、失敗してウィンタークイーンの支配下に置かれているのです。

その最近の失敗例が、ウィンターガールとなってしまったドニア。
ベイラに虐げられつつもキーナンを慕い続けるドニアの物語もまた、この話の重要な部分を担っています。

というか、わたしにはドニアの話の方が興味深かったですね。

妖精の怖さと魅力をえがく丁寧で視覚的な文章はとてもうつくしく、サスペンスホラーのようなダーク展開も妖精譚ならではと思えます。

でも、アッシュリンの歩む道はとても現代的で、作品そのものも全体的にこれまでの妖精譚とはすこし肌合いが異なるのです。
なんとなく、妖精が人狼や吸血鬼と同じレベルの存在であるようなかんじといったらいいのかな。

そもそも、この話に出てくる妖精たちは土地に縛られていないように思えます。
すんでいる所はロフトだし、パーティーをしているのも人間の施設だし。
魔法のノウハウに植物が出てくる程度で、物語世界にも自然描写が少ないです。
それは、アメリカだからなのかそうではなく都市が舞台だからなのか、どちらかはわたしにはわかりませんが、もはやフォークロアから派生したファンタジーではないみたい。

この話をすんなりと受け入れるひとたちは、自分の住んでいる土地の気候や風土に対する思い入れがないのかなとおもったり。
もしかして、土地に根ざした歴史の短さのせいなのかな。
そもそも、アメリカには独自の精神世界を持った文化が存在しているわけですが、そのことにもまったく無頓着なまま進んでいくお話に、地味なショックを受け続けつつ読んでいたような気がします。

おなじ新大陸が舞台になっても、ネイティブの文化をも視野に入れたファンタジーとは、まるで違いました。

旧大陸の妖精譚をまねて造った、よくできたレプリカのような、あるいはテーマパークのような、ふしぎな浮遊感の漂うお話でした。現実世界にも同レベルでのふわふわ感があるのはロマンスものだからでしょうか。
妖精界にも現実にもよりどころがないって、へんな感じです。

ときどき、ここ笑う所じゃないだろ、て冷静になると思うような所で噴いてしまったり、しました。ギャグみたいに感じてしまうんですよね、なぜか。

そうそう、アッシュリンの選択にもぎょっとしました。
ロマンス的にはめでたしめでたしなんだけど、ファンタジー的にそんなこと可能なの?
破綻はないの? ねえ、ねえ? って問い詰めたいような心持ちです。

登場人物的には、セスは出来過ぎの男の子だと思います。
こんなに辛抱強く献身的な若い子が、現実にいるかー!!!w
むしろサマーキングの方が、ありうるような……。

や、ドニアはけなげですよ!
ドニアをヒロインにしたらまっすぐファンタジーになった気がする。気がするだけかもしれないが。

続編があるのですが、どうやら今度はアッシュリンの友人がヒロインになる模様。
いったい、どうやってシリーズに決着がつくのか知りたいですが、全四巻だそうですので先は長いです。世界は滅ばないの?

闇の妖精王 (創元推理文庫)
メリッサ・マール 相山 夏奏
4488544037

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