『トロイメライ』

トロイメライ
池上 永一
4048741004


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読了。

十九世紀の那覇を舞台に庶民の日常の事件を描く、時代小説連作短編集。


第一夜 筑佐事の武太
第二夜 黒マンサージ
第三夜 イベガマの祈り
第四夜 盛島開鐘(ケージョー)の行方
第五夜 ナンジャジーファー
第六夜 唄の浜



江戸なら岡っ引きとよばれる存在・筑佐事になった若者武太を狂言回しにした、短編連作です。
同著者の『テンペスト』とおなじ物語世界が舞台になっていますが、王宮で時代の波を直接描いていた『テンペスト』とは異なり、こちらは庶民の日常がメイン。

美しい那覇の自然を背景に、貧しくも逞しい庶民の悲喜こもごもが描かれています。

なかでも印象的なのは雑多なひとが集まるお寺・涅槃院の住職、大貫長老。
世にも美味なる料理を庶民に供する宿屋兼料理屋『をなり宿』の女主と三姉妹。
超絶美貌で男をもてあそぶ恐怖のジュリ・魔加那姐さん。

このひとたちは池上作品に特徴的な強烈無比なキャラクターでして、かれらの登場シーンはハイテンションなギャグマンガみたいな調子で展開します。
この荒唐無稽さが、いつもながらわたしはとても好きなのです。

それだけでなく、控え目ながら存在感を発揮する武太や三姉妹を見守ってきてくれたサチオバァや、親に売られる子供たちや、借金苦で墓を売る未亡人などの普通だけどそれぞれに苦労しているひとびとも登場します。物語の骨格は地に足がついてます。

かとおもうと思うと、意志を持った三線なんてのも出てきます。

笑いつつ、ほのぼのしみじみするような読後感のお話が多かったです。

『テンペスト』でおなじみの面々もちらほら出てくるので、そちらを読んでいるとウフと楽しいです。

タイトルの『トロイメライ』は、ドイツ語で夢を見ること、夢想すること、だそうです。

うたかたの夢のように消えた、名もなき人々のものがたり、というような意味なのかな。
かまえずに読める、琉球時代小説。
つづきも刊行されているようです。

トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ
池上 永一
4048742027

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