『凍りのくじら』

凍りのくじら (講談社ノベルス)
辻村 深月
4061824589


[Amazon]


読了。

現代日本を舞台に、辛い現実から眼を背けて時をやり過ごそうとしている少女の葛藤を鮮烈に描く、すこし・不思議なミステリ。



高校二年生の芦沢理帆子は、藤子・F・不二雄の作品になぞらえ周囲の人々を「すこし・○○」となづけて分類していた。女手ひとつで自分を育ててくれた母親は、すこし・不幸。かりそめの関わりをつくるのは得意だが現実から乖離気味の自分は、すこし・不在。死を目前にした母親の見舞いに病院に通いながらも、そのことをだれにも明かさず、内心見下している友人たちと刹那的に時間を過ごしている。そんな理帆子の前に、司法試験を言い訳に別れた元カレの若尾が舞い戻ってきた。試験に落ちた若尾は、以前の若尾とは違っていた。いや、以前からその兆候はあったのだ。強引な若尾と距離を置こうとつとめるがうまくいかない理帆子は、ある日、すこし・フラットな三年生・別所あきらと知り合う。




先頃読んだ『光待つ場所へ』収録の短編「樹氷の街」と登場人物が重なっていたので読んでみました。
青春は痛々しいものだけど、こんなに設定から痛々しい話だとは。

冒頭の流氷の中に沈んでいくくじらたちのエピソードの悲痛が、作品全体を覆っています。
その痛々しさをあるところでは救い、あるところではより切なくさせるのが『ドラえもん』へのオマージュ。

主人公・理帆子の父親との思い出が『ドラえもん』に凝縮されていて、楽しかった過去と失われてしまった存在の大きさを幾度も幾度もくりかえし提示してくる展開に、気分的には半泣きで読みつづけておりました。

話の展開はサイコサスペンスだけど、書かれているのは理帆子が長い間逃避していた現実を苦しみながらも受け入れて、哀しみを乗り越えてゆく成長物語でした。

悲劇的な設定がちょっと大掛かりすぎるように思いますし、漂う死のにおいに陶酔してるような雰囲気も気になりますが、それが最後の最後の驚きに転化するところで、ああ、やられた、と思いました。

もっと若いときに読んでいたら、どっぷりとはまったんじゃないかと感じます。

ちょっと皮肉っぽくてスカしててクールな文章とか、傲慢で繊細な主人公とか、反発を覚えつつもすごく惹かれたんじゃないかなー。

と、そんなことを思う自分はかなりくたびれてるなーと、苦笑いしてしまいますw

しかしです。
このつぎはどれを読もうかなと思ってる当たり、いまのわたしもけっこうこの作者さんが気になるようです。

できればこの話と登場人物が繋がってる話がいいな。把握するのがラクだからw


読んだのは新書判ですが、文庫化されてます。
凍りのくじら (講談社文庫)
辻村 深月
4062762005

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)