『ルート350』

ルート350
古川 日出男
4062133911


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読了。

現代日本における社会秩序と規範の崩壊のなかで生きていく若者たちを描く、スタイリッシュな短編集。読みは「ルートサンゴーマル」です。

収録作品は以下の通り。


お前のことは忘れていないよバッハ
カノン
ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター
飲み物はいるかい
物語卵
一九九一年、埋め立て地がお台場になる前
メロウ
ルート350

補記




久しぶりに読んだ古川日出男は、移動図書館でみつけた短編集でした。

この作者さんは文体に非常な美意識というか、技巧を感じる方なのですが、短編ということでほかにもいろんな試みをたくさんされている感じがします。

読んでいて、うわあ、巧いなあ、かっこいいなあ、という印象がとても強く残ります。

内容はかなりぶっ飛んだ設定なうえに殺伐としているんだけど、その技巧でうまく物語につれてゆかれたなと思わされるところがありました。

どれもどこが着地点になるのかわからない話で、いちばんキュートだったのが「お前のことはわすれていないよバッハ」。

この話も話そのものは、うわー酷いなーなにこの状況ありえないしー、と言わざるを得ないんですけど、バッハという名の小動物をメインに据えているためとても救われてます。
世界中を駆け巡るハムスターの冒険を、家族の崩壊をベースにして描く話なんて、いままで読んだことないです。

家族という社会の最小単位の崩壊から始まる短編集は、どれもこれも常識が通用しなくなった世界の物語で編まれています。

思い返して見ると、もともと、そういう話を書く作者さんだったんですねえ。

社会のルールがなくなった混沌とした中でのサバイバル。
突拍子もないけど、どこかにこんな現実があるかもしれないとかすかに不安を抱きながら読んでいた物語。

それを今は、架空のこととして流してしまえない自分の状況に愕然とします。

クールに距離を置いて描かれてるけど、すごくこわい短編集でした。


すでに文庫化されてます。
ルート350 (講談社文庫)
古川 日出男
4062763389

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