『高慢と偏見とゾンビ』

高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
ジェイン・オースティン セス・グレアム=スミス 安原 和見
4576100076


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読了。

十八世紀イギリスのロマンスコメディーの古典『高慢と偏見』を、原文の八十パーセントを使用したままゾンビの跋扈する世界に書き換えた、とんでも設定のパロディー小説。


十八世紀末、原因不明の疫病によりゾンビの跋扈する世界となったイギリス。上流の紳士階級に属するロングボーンのベネット家では娘の結婚を生き甲斐とする母親ベネット夫人をよそに、父親ベネット氏は五人の娘たちを最強の戦士として育て上げ、彼女たちもゾンビ退治に修業にと余念が無かった。そんなある日、近所のネザフィールド・パークに資産家で独身の若者ビングリーが姉妹たちと引っ越してきた。なんとか娘たちを縁づかせようというベネット夫人の働きかけにより、ビングリーと長女のジェインはおたがいに好意を持ち始める。しかし、次女のエリザベスはビングリーの友人ダーシーの高慢な態度に憤慨し、すぐに首を刎ねてやりたいというのだった。




読みながら、あぜんぼう然。
原作とほぼ同じ文章を用いながら、なぜここまでぶっ飛んだ話が展開されるのか。
いや、舞台設定からしてぶっ飛んでいるのだから当然なんですが、それでも八十パーセントが原文のままっていうのが驚きです。
たしかにそこここに読み覚えのある文章があって、しかしそのことに全く違和感がない。
むしろ、原作の冗長だったところが解消されて、読みやすくなってるような気がするのがなんともはや。

しかしこれはもはやロマンスコメディーではありません。
ロマンスギャグ? しかもテイストはかなりブラックです。なんとなれば人がどんどんゾンビになるし、殺される。
ヒロインはゾンビと戦うために鍛え上げられた戦士なので、ゾンビはもちろん殺しますが(ゾンビを倒すことが殺すことなら)敵対する人間も殺します。あまつさえ、気にくわない相手の首をすぐに刎ねてやりたいなどと口走るのです。

そんななので、女性相手の口げんかがいつのまにか一対一の果たし合いになっていたりします。
このアクションの描き方はまさに格闘ゲーム。

ようするに、ロマンチックなムードはかけらもありません。
そういうのを期待するとがっかりします。

しかし、わたしはこういうのが嫌いではなかったりします。
なんといえばいいのかな、物語世界を丸ごと皮肉な冗談として楽しむという感覚でしょうか。

ゾンビの存在が原作のドタバタ要素を強調して、ハイテンションなお馬鹿ギャグコメディーになってるなーと思います。

なぜなのか理由はさっぱりわかりませんが、ゾンビー退治の戦士になるためには東洋の武術を習い覚える必要があるらしいです。
貴族は館にドージョーをもってるなどの、珍妙な日本文化と中国文化とかが満載、もう小ネタが笑えてたまりません。
なぜかレディ・キャサリン・ド・バーグが日本びいきで護衛がニンジャだったりね。
ベネット家の娘たちは中国の少林寺で修業したらしいです。でも愛用のマスケット銃も持ってるのよね。

エリザベスの親友だったシャーロットのエピソードはさらにブラックな有り様になってるし、ウィカムとリディアのエピソードもそんなアホウなな展開になってるし、いや、ちょ、それ違うでしょ、いいの? それでいいの? なにかが違うんじゃなーいと、読みながら目が点になりっぱなしでした。

悪ふざけが嫌いな人にはお勧めしませんが、こういうものに寛容な方は楽しめるのではないかと思います。

はい、わたしはたいそう楽しかったですw

これを読んでから原作を読むとわかりやすいかも、などと論外なことを思ったりしました(苦笑。

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