『クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーV』

アバタールチューナーⅤ (クォンタムデビルサーガ)
五代 ゆう 前田浩孝
4150310483


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読了。

文明が崩壊していく中、自我を持ったAIたちが悩み苦しみ怒り悲しみながら、たがいを思いやり、滅びにあらがい戦う姿を臨場感あふれるスケールの大きな筆致で描く、壮大な近未来SFアクション。シリーズ完結編。

凄い物語を読んでしまいました。

読み終えてしばし放心状態に身を任せました。

そもそも、描写力がものすごいのです。
登場人物の動きが感情が、その作用によって周囲の受ける影響が、目に見え、肌で感じられるように、波状攻撃を仕掛けてくるような文章なのです。

その描写はたんなる描写ではありません、きちんとストーリー上の意味をもって書かれていて、きちんと読むほどにのちの状況も腑に落ちるという、伏線の一部分であるのです。

そんな濃密な文章で描かれるのは人類文明の崩壊していく過程です。

滅びに瀕し、あえいでいる人類にあらわれた救い主は、悪魔(ASURA)でした。

この物語は自我を持った戦闘AIの物語として進んできましたが、ここにきてもっと壮大な、地球的な規模の進化の物語であることが判明します。

読みながら視界がいきなりひらけて、さらにそれによって深くなっていく絶望感にぼう然としました。

SFだ、これはSFだー、と思いました。
同時に、やっぱりSFだった、SFだからこうなるんだよねーとも、思いました。

しかし、この話の真骨頂はここからだったのです。

これから先はもうわたしには書けることがありません。
読んでいて光瀬龍を思い出し、『百億の昼と千億の夜』を読み直したくなりました。
また、アニメ『魔法少女まどかマギカ』も思い出しました。
……これだけ書けば十分、というかすでに書きすぎな気がしないでもないですが(汗。

読み終えて、うわーと押し寄せてくるおおきななにかをただ受け止めました。
怒濤のクライマックスのあとで、淡々とつづくシーンひとつひとつに胸が熱くなってしかたなかった。
〈エンブリオン〉のメンバー、ひとりひとりがとても愛おしい。
作者さんが「登場人物たちが納得しておわるハッピーエンド」と書かれた、まさにそのとおりのラストでした。
よいものを読ませてもらったなあと、思います。

それと、本文中に挿入される引用には、いろいろと考えさせられました。
哲学関係は、わたしには文章の意味をとるのも難しいのがたくさんありましたが、興味をひかれます。

そして、最後にでてくる教授、なんか見たことのある名前……と思ったら、野阿梓『兇天使』にも登場されたかただったんですね。この方の考えもたいそう興味深かったです。

まだ、きちんと読み切れてない気がするので、また読み返したいです。というか、読み返します。
そして、『百億の昼と千億の夜』を読みなおしたい。『兇天使』も読みなおしたい。と、思いました。

鏡明氏が解説で日本SFの到達点のひとつと書かれているのは、そういうことも含んでのことなのではないかしら。

ところで、セラが水無瀬眞をみつけてきた理由は、あれですよね。きっと、たぶん。


シリーズ開幕編はこちら。
クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅠ (ハヤカワ文庫JA)
五代ゆう 前田浩孝
415031022X

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