『七姫物語 第六章 ひとつの理想』

七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)
高野 和 尾谷 おさむ
4048705520


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読了。

天下を取ると公言する男達についていくと決めた女の子の、好奇心いっぱいの瞳に映るシビアな戦乱の世界を、丁寧にたおやかに情景豊かに描く、異世界歴史小説。シリーズ完結編。

面白かった、そしてすてきでした。

七人の巫女姫をいただく七つの都市の勢力争いから戦乱へ、またそこから収束へと至る困難で複雑なみちのりを、これだけ隅々にまでこころをくばって描き出す力量に、感動しました。

戦という血なまぐさいものをきちんと描いているのにも関わらず、ここに流れる空気がやさしいのは、巫女姫の視点を通して描かれているからかもしれません。

まだ恋も知らない少女たちは、どれだけ政治的な思惑を持とうとも、純粋に自分たちの都市を思っているとわかるから。

そして彼女をまもる、まもりたいと願う人たちも、彼女たちの意志を損ないたいとは思っていないから。

できるだけ、多くの人々を幸せにしたいと願うこころが、この物語にはみちている、と思いました。

この巻のメインは二宮スズマでした。

ひとつの主張意外は認めない、真都同盟の気持ち悪さの理由を辛辣に描きながらも、そう流れて行ってしまう人々の弱さと、そんな人々支えようと頑張るけなげな巫女姫の孤独を描いて、共感へとみちびきなおかつ警鐘を鳴らす。

そんな流れの話の中で、翡翠姫と異国のはぐれ王子とのあいだに交わされる会話が、とても興味深かったです。キャラクターノベル的にも今回の主役はこのふたりだったのではないかと。

七宮カセンを率いるテン・フオウとトエル・タウのふたりが目指したものがなんだったのか、という大きな謎も、真都市同盟との対比の中でうかびあがってきます。

東和というひとつの国の中でおきた古い社会システムの崩壊と再編成へといたる道。
それが、この物語のメインストリームだったんだなあと、あらためて思い至った次第です。

話が大きくなった分、カラとヒカゲくんの出番は個人的なものではなく彼女たちの属する陣営のものとして描かれることが多くなりました。

世の中にはたくさんのひとが、それぞれにことなる意志を持ったたくさんのひとがいること。
そのことをきちんと認めて互いに尊重しあうことの難しさと大切さと通じ合えたときの喜びと。

さまざまな出来事を見て、経験して、ここまでたどり着いたカラカラさん。
彼女とうさん臭い二人の男が成し遂げたひとつの到達点に佇んだラストシーン。

庶民の視点で終始ほんろうされた絵師のエヅさんのしたたかなエピソードを読み終えたときには、とてもゆたかでやさしい気持ちになりました。

たいそう、すてきな物語でした。読めてよかった、しみじみそう思います。

シリーズ開幕編はこちら。
七姫物語 (電撃文庫)
高野 和 尾谷 おさむ
4840222657

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