『風の王国 王太子の花嫁』

風の王国 王太子の花嫁 (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086014653


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読了。

吐蕃王に嫁いだ唐の公主の波乱万丈の運命を描く、歴史小説。
シリーズ二十一冊目。


吐蕃王にもどったソンツェン・ガムポの命により、混乱のシャンシュンをのりきった翠蘭も、戦後処理を終え吐蕃に戻って一年が過ぎた。言い渡された期間が過ぎ、翠蘭はソンツェン・ガムポとの再婚を迎えねばならなくなった。リジムの面影はいまだ心に深く刻まれている。しかし吐蕃の安定のため、リジムの残した息子ラセルのため、翠蘭は己の心をおしころして婚礼に臨むが――



唐の公主として吐蕃王に嫁いだ翠蘭が意志的に歴史の動乱期を乗り越えて行く、激動の歴史小説。久しぶりに続きが読めました。
少女向けレーベルのシリーズでシリーズ始めはかなり甘甘でしたが、このところ、こんな展開で少女向けでいいの?と心配になってしまうほど、大変にシビアーな中身です。

この巻ではなんと、ヒロインが再婚してしまいます。
すでに子持ちだし、未亡人なんだし、もう、ここまできたらネタバレとかいいですよね……;
とはいうものの、あまり書くとこれから読もうと思われる方に失礼なので詳細は伏せときますが。

この巻では、ヒロインの傷心にああ、かわいそうにと同情してたのが吹き飛ぶような衝撃の事実にぼう然とします。

よくもまあ、つぎからつぎへと試練が待ちかまえていることです。

それをなんとか乗り越えて行く翠蘭の活躍が読みどころなんですが、もうほんと、気がめいるような人間関係がつぎつぎにあきらかになるので、ほわほわ幸せになりたくて本を読む方にはお薦めできないですね。というか、そういう方はすでにここまで来る前に脱落しているものと思われますが;

むしろ、シリーズ当初の甘甘、ヒロインさらわれまくりな展開に辟易されていた方にこのあたりを読んでほしいなあと思います。

このシリーズの真骨頂は私的には「嵐の夜」あたりからだと思ってます。

そのあたりから「つづきがでるか否か」という心配をするようになってきましたのでww

正直、いまのコバルトのラインナップからは完全に浮いてますけど、このシリーズはレーベルの良心だと勝手に思っております。

この度の読みどころはラセルの花嫁探しに出かけた先の、ツァントゥー領主ゴワルのゆがんだ人格といびつな親子関係かな。
すてきに不快な人物が複数いきいきと活躍しております。シャンシュンのときにも思ったけど、こういう自分勝手な人物を書くのが本当にうまい作者さんです。そういう人物がいかに不条理でストレスフルな状況をつくりだすかというあたりの描写も、いらいらするほど臨場感があります。

意志疎通の難しさのリアルさが、この話のシビアさの一端でもあるかもなー。

あと、翠蘭に随行した女官たちが楽しい、若い女の子たちがきゃわきゃわしてる感じで、重苦しい展開の中の一服の清涼剤でした。

と、いろいろ思いながら楽しく(まじです)読んでましたが、本編がサブタイトルまで行き着かないうちに途中で短編に切り替わったのでちょっと驚いた。どうやら原稿が間に合わなかったみたいです。

収録作は「月夜の呪文」。
国王付きの魔術師になったチュツァリと女官サシャのお話。
翠蘭やリジムの知らない王宮や王国の事情がわかるせつないお話でした。

シリーズはすでに続刊が出ています。

風の王国 春の使者 (風の王国シリーズ) (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086015013

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