『ひなのころ』

ひなのころ
粕谷 知世
4120037193


読了。

少し前の日本を舞台に、ふつうの女の子の日常の一場面をきりとって家族の歴史をえがく、ちょっと不思議でちょっと怖い連作短編集。


雛の夜 風美 四歳の春
祭りの夜 風美 十一歳の夏
月の夜 風美 十五歳の秋
年越しの夜 風美 十七歳の冬



これまで南米を舞台にしたけっこう大掛かりなファンタジーを書かれてきた作者さんの、意外なように思える日本を舞台にしたふつうの女の子視点の話です。

と、思って読みはじめたのですが、読み進むにつれてしだいに作品世界はどんどん深くなっていきました。

最初の話で四歳だったヒロイン風美ちゃんのお話は、子供らしい奔放な想像力のひろがるものかと思われたのですが、風美ちゃんが成長するに従い、想像だけではすまないなにかが感じられるようになりすこし怖くなってきます。

おそらく、風美ちゃんの家族にはひとには見えないものを見る血が流れてるんだろうな。
そういうことはお話の中にはひとことも書かれていないんだけど、たぶんそうなんだろうと私には思えます。

描かれて行くのは風美ちゃんの病弱な弟を持って厳しい祖母に育てられたという、日常な家族関係や友人関係ですが、風美ちゃんが年を重ねる事に、だんだん自分の視野の外にあった家族の歴史が見えてくるさまが成長として描かれていくあたりがすばらしいなあと思いました。

そして、この話では風美ちゃんのきづくきっかけや弾みとなるのが、死後の世界とのかかわりなんですよね。

なんとなく、死んだ家族をミイラにして生きてるものとして扱いつづける南米の風習に通じるものがあるなあ、と思いました。

人は人が覚えている限り生き続けているんだよなあ。
お祖母ちゃんにはまだ生きている人物が、そのことをしらない風美ちゃんに“視える”ことによって生まれてくる、エピソードの不思議さや切なさが、さいごにどどどっと押し寄せてきて、涙がにじんできてしまいました。

風美ちゃんが大きくなるにつれて、あたりまえだけど老いていくお祖母ちゃんの姿も切ない。
切ないといえば、家族ひとりひとりがみな、不完全な自分のした不完全な過去を抱えて、不器用に生きている姿そのものが切なかった。

わたしは多分、物語設定からだと風美ちゃんとおなじくらいの世代で、いまは風美ちゃんの親くらいの年代なので、おもいきり感情移入して読んでしまってますね。とくにお祖母ちゃんがせつなくてもうもうもう。

死は現実のすぐそばにあるんだなーとか、思ってしまったりして。

ああ、だめ。書いてると泣きそうになるわ。ぐしゅぐしゅ。

セカンドサイトものとしてはごく地味ですが、とても地に足のついた佳品です。

わたしの読んだのは単行本ですが、すでに文庫化されてます。

ひなのころ (中公文庫)
粕谷 知世
4122049733

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