『風の王国 春の使者』

風の王国 春の使者 (風の王国シリーズ) (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086015013


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読了。

政略結婚で吐蕃王に嫁いだ唐の公主の波乱万丈を描く、少女向け歴史小説。シリーズ二十二冊目。


吐蕃王ソンツェン・ガムポの妃となり重い事実を打ち明けられた翠蘭は、王太子ラセルの花嫁選びのためツァントゥーを訪れていた。ツァントゥーは当主が吐蕃の家臣となったことをなかなか認めたがっていない。ラセルの将来のために政治的かつ人を見る判断力が問われる任務だ。翠蘭は四人の花嫁候補を紹介されるが、周囲のためになかなか公平な状況で観察することが出来ずにいた。そのうち翠蘭は、ツァントゥー内部の勢力争いと、それにかかわる重大な事実を知らされるが――




翠蘭、ラセルの花嫁を選ぶの下巻です。

政治的な駆け引きと欲深い人間の卑劣な金もうけ。
それに巻き込まれる無力な人々の悲劇に、立ち向かう意志を持ちつづける勇気。

あいかわらずシビアな展開ですが、今回は深い苦悩と悲しみの中で女性の強さ、母の子供への愛情がひとすじの光のように感じられるのが救いでした。

ツァントゥーの当主で頑迷なゴワルの妻ツェサの述懐にしみじみとしました。
ソンツェン・ガムポの妻ともなれたはずの自分の娘時代の決断と、それが招いた辛苦。
それでも彼女は彼女なりに懸命に力を尽くしてきたんだなあ。

その長き状況を時期がよかったとはいえ、あっという間に覆してしまった翠蘭は、やっぱりスーパーウーマンでございます。

花嫁候補の女の子たちの個性と立ち居振る舞いがそれぞれに印象深く、こんなにぎゅうぎゅうな展開なのにきちんと花嫁選びの根拠がわかるのもよかったです。

しかし……はやくもラセルは尻に敷かれそうな気配ですねww

人間を所有物と考えるのはなにも過去ばかりではありません。
現在のさまざまな暴力や虐待の原因も、そんな考えが引き起こしているような気がします。

深い人間観察と事件の展開にミステリ的な要素も感じられるお話でした。
面白かったです。

例によってつづきも刊行されています。

風の王国 山の上の賢者 (風の王国シリーズ) (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086015390

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