『初恋ソムリエ』

初恋ソムリエ
初野 晴
4048739980


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読了。

弱小吹奏楽部の存続と繁栄にむかってつきすすむ女の子と幼なじみの、青春ミステリ短編集。
『退出ゲーム』につづく通称「ハルチカ」シリーズの第二作です。

フルート初心者のチカこと穂村千夏の元気な一人称で語られる、テンポのよい日常ミステリです。相方というかホームズ役の美少年ハルタこと上条春太とのかけあいも楽しく、軽妙な雰囲気です。

収録作品は以下の通り。


スブリングラフィ
周波数は77.4MHz
アスモデウスの視線
初恋ソムリエ



話は連作の形にはなってますが一冊まとめての仕掛けはなく、廃部寸前だった吹奏楽部が少しずつ成長していく姿が軸になってます。

前巻ではひたすら部員集めに奔走していたチカちゃんたちが、普門館で行われる全国大会を目指すと公言してて、うわ、成長したなあ、というより大きく出たなあ、という感じ。

いっぽうで、同じ人物に片思いしてさや当てを繰り返す、チカちゃんとハルタのやりとりが笑えます。

さらに吹奏楽部外から事件を提供してくれる文化部や生徒会の変人たちも楽しいのです。

吹奏楽部の音楽的な成長もきちんと書いてあって、そのあたりのすこしだけ専門的な部分も興味深いです。

ミステリに疎いわたしにはよくわかりませんが、謎解きとしてもけっこう面白いんじゃないでしょうか。

現代的なアイテムや問題が多数とりあげられていて、それはこのシリーズ以前の作者さんの持ち味に通じます。

同時に、光のあたる日常をのほほんと歩いていると、足下に隠れて潜んでいる深い無法の闇を突きつけられる驚きにどきりとする。

ただ、たしかにこういうことが過去も今も現実にあるんだろうななと思わせてくれるリアルに、闇にいるものの孤独や辛苦が、やりきれない切なさを感じさせて話が奥深い。

社会的なシステムからおちこぼれてしまった、もしくはそれではすくうことのできない、弱者の存在を忘れない。

わたしはこのシリーズのそのあたりに魅力を感じるのだと思われます。

単行本を読みましたが例によってすでに文庫も出てます。
初恋ソムリエ (角川文庫)
初野 晴
4043944551


さらにシリーズの続編も刊行済みです。
空想オルガン
初野 晴
4048740970

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「初恋ソムリエ」初野晴

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