『ロシア異界幻想』

ロシア異界幻想 (岩波新書)
栗原 成郎
4004307724


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読了。

ロシア人の精神世界についての概略本。
内容は以下の目次にて。



 世紀のはざまにて/幻視と啓示/「真に幻想的なるもの」を求めて/日常性の中の異界現象

第一章 「この世」と「あの世」のしきい
 ロシアの農民の死に方/死の予告/帰ってくる死者/亡霊防御法/《忘却の川》のかなたへ/過度の哀悼の禁止

第二章 家の霊域に棲むもの
 宇宙のモデルとしての家/聖所としてのペーチ/“赤ん坊の焼き直し”/母親としてのペーチ/家神ドモヴォイ/家族の成員の不幸を予告する/ドモヴォイの外貌/変身能力/ドモヴォイを見るのは危険/夢魔/青痣/好色/家畜の守護神/氏族神/かまどの火の神/家と人生/呪術師大工とキキーモラ

第三章 ロシア・フォークロアにおける「死」の概念
 フォークロア的に「死ぬ」とは/「生」と「死」の闘い/無敵戦士アニカの最期/死神幻想/死の天使/霊は風か火か/旅立ち/幾山河越え去りゆかば/爪の威力/「あの世」での生活

第四章 「聖なるロシア」の啓示――民衆宗教詩『鳩の書』
 民衆の中の宗教詩/民衆宗教詩『鳩の書』とは/『鳩の書』の成立と解釈/「正義」と「不正」の闘い

第五章 ロシア的終末論
 地の嘆き/終末期待/小終末と大終末/終わりの時の徴/中世の反キリスト伝説/クバン・コサックの終末伝説/反キリストは東方より

第六章 天国と地獄の幻景
 死者の国はどこにあるのか/宇宙卵と世界樹/「ブヤーンの島」/「楽園」への旅/地上の楽園/地獄の位置/地獄の責め苦

付録 『鳩の書』
あとがき
参考文献



なんでこの本を借りたのかというと、はじまりはE.L.&P.の『展覧会の絵』でした。
曲名にロシアの魔女ばあさんバーバ・ヤガとかあるでしょう。
そういえば、ロシアの民話とか神話とかはよく知らないなあと思い至り、それがちょうどリアル図書館で本を物色していたときだった、というわけです。

民話や神話そのものを借りなかったのは、たまたま書架にそのものずばりのタイトルが見当たらなかったから。

予約すれば取り寄せられるのだけど、予約枠を使い切っていたからリアルに行ったので、そこはどうしようもないところでした。

結論からいうと、それでよかった点も悪かった点もありました。

よかったのは、上から俯瞰するような視点からの解説が読めたこと。
ディテールを知る前にその意味する所からはいっていくという感じになりました。

具体的にいうと、ロシア人の死生観を読んでからその実際例をしるパターン。
ロシア人は死そのものではなく、死に当たって準備が出来ないことを恐れるそうです。
立つ鳥跡を濁さず、というやつでしょうか。

故に突然死は忌み嫌われて、突然死した人への気持ちは良いものになりません。
本人にも家族にも不幸をもたらすものになるそうな。

失敗したなーと思ったのは、抽象概念を解説するので専門用語が多いこと。
基礎知識がないと理解しにくい所が多々ありました。
それが足りないと実感したのは、キリスト教関連のとくにロシア正教関連。
カトリックとの比較ではカトリックへの理解の浅さも実感しまして、ああううと思いながら読みました。

聖書の外典てなに?
それって禁書になるの?

みたいな(汗。

なんとなく想像したところでは、二次創作みたいなものかな、外典って。
それが妄想逞しすぎて道を踏み外したら、公式としては認めたくないですもんね。

それはさておき、印象に残ったのはロシア人の終末思想好きと、ロシア神聖視史観でしょうか。
とくに聖書に出てくる土地はみんな現実にあるのに、すべてロシア国内に置き換えてしまうあたり、びっくりしました;

ロシアにはいろんな民族がいるはずなので、それをまとめるには多少強引な手法が必要だったのかな。

キリスト教が広まる過程で土着の信仰と混じっていくのはどの土地でも起きていることで、だいたい純粋なキリスト教ってどんなのかも、わたしにはよくわからないわけですが、確かにロシアにはかなり独特なキリスト教を作り上げてしまう精神世界があるわあ、と感じました。

残念なのは、この本に提示してある異教は、キリスト教が入ったあとの名残でしかないところです。
かつての祖先神やかまどの神、豊穰神などなどたくさんの神がまとめられてしまい、それらのいろんな性格を残しながらもひとつ、ふたつの呼び名しか持たないような、そんな単純化されてしまった状態です。

しかも、ソ連時代に宗教が否定された結果、キリスト教に結びつけられて維持されてきた部分まで引きはがされて、細かな部分が伝わっていないらしい。

うーん。なかなか大変ですねえ。
ロシアの精神世界についての文献がとても少ないのはそういう事情のせいもあるのかも。

とにかく、よくわからなくて読み流してしまった部分とか、期限に迫られてきちんと考えられなかった部分とか、たくさん心残りがあるので、ロシア関連はしばらく心に留めておこうと思います。

世界は卵設定とか、世界樹設定とか、魅力的な題材がたくさんあるようなのです。

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