『金色の獣、彼方に向かう』

金色の獣、彼方に向かう
恒川 光太郎
4575237469


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読了。

普通のひとびとの出会う怪異な事件を、元寇とともにやってきた不思議でおそろしい金色の獣の存在とからめて描く、幻想ホラー連作短編集。


異神千夜
風天孔参り
森の神、夢に還る
金色の獣、彼方に向かう



面白かったです。
超常現象よりもどうかすると人間のほうが怖いという恒川節が、今回も炸裂してました。

冒頭の話は珍しく歴史物。
いったいどの時代だろうと考えながら読みはじめましたが、鎌倉時代でした。
元寇の直前に対馬でうまれた少年の数奇な運命を歴史的な大イベントとともに描く、かなり過酷なお話。
同時に元寇における日本と南宋の関係をほぼ初めて知りました。(朝鮮と日本はなにか別の小説で読んだ気がする)
それに、モンゴルに征服されたあまたの民族の中で西夏の人が出てきたりもする。→『シュトヘル』!www

途中ででてくる謝国明という人物になんか覚えがあります。歴史の授業で習ったのだろうか。

それから時代はいっきに下って、のこりの三編はほぼ現代、昭和、さらに現代とちょっとノスタルジーを感じるところが舞台になります。

すべて異形の金色の獣の存在による超常現象にかかわったひとびとのお話で、しかし、メインになるのが超常現象ではなく、ひとの業のようなもの、事件そのものは現象に出会ったひとが生み出したものであることが、この作者さんのお話のホラーなところだなーとしみじみ思いましたです。

話を一見するとまるで新聞の三面記事のような雰囲気があるのもそのせいでしょうか。

現象はよいもわるいも関係なくそこにあるもので、出あった人間がその出来事をどううけとめるかで事態が変わる。

そのものすごく俗っぽくて猥雑で欲望にあふれて間違いだらけで裏切られて救われずに下降線をたどる悲惨な例が、ホラーになるのかなあと思ったりしました。

反対にピュアで世間知らずで志があって、他人を信じて最後に救われるのがファンタジーになるのかもとか。

というわけで、読後感がひええええ~っなことも多い恒川作品ですが、この作品集のしめくくりはそれほど悪くはなかったです。

悲惨は悲惨で、このまま事件はあちこちで起きつづけるんだろうなあうわーと思われるけれど、その事件の日常性も恒川作品のいやな持ち味(←ほめてます)なんだけど、金色の獣が人間のどうしようもなさとは別の次元で自由に生きてるって感じがするからかな。

日本が舞台になったぶん、物事がリアルに感じられて、前作よりもホラー色が増した短編集でした。

↓こちらはファンタジー色の方が濃い作品集です。
竜が最後に帰る場所
恒川 光太郎
4062165104

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