『夢見の猫 風の犬宮』

夢見の猫 風の犬宮 (くもんの児童文学)
牧野 礼 中川 学
4774320625


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読了。

平安朝末期の混乱期を舞台に猫と人の末裔の少女の成長を描く、児童向け時代ファンタジー。


武士である平氏が貴族を追い落とし、絶頂期を迎えていた平安の都。その都をかこむ森にある千足の里に、大陸から渡ってきた猫の子孫がひっそりと暮らしていた。国つ神からふしぎなちからを得た千足の猫は人の姿になれる特別な猫で、呪いをなりわいとする〈蠱毒使い〉の垂涎の的だった。千足の猫の少女・夜斗は、過去に犬に襲われて尾を食いちぎられた。満月になるとみる犬が封印された戸から出てこようとする夢はその恐怖のあらわれなのだと言われるが、どうも腑に落ちない。しかも十四になるのになかなか成人と認めてもらえずにふさいでいる夜斗に、大好きなおさななじみの尾長が結婚を申し込んでくれた。しかし、喜びもつかの間、夜斗はちび耳を助けるために出てはいけない里の門から外に出、直後に尾長の死を知らされる。



すっきりときれいにまとまった、かわいらしいお話でした。
舞台が、今話題の清盛の全盛期ということでちょうど読むのに良い時期だったかもしれません。

主人公はふしぎな力を持つ猫の末裔の少女・夜斗。
彼女の見る犬の出てくる悪夢から話は始まります。夜斗は幼い頃に犬に襲われて尻尾が短くなりましたが、その時のことを覚えていないのです。

千足の森に住む猫の末裔、通称千足の猫には、子猫は里から出てはいけないという掟があります。
千足の猫は呪術のかっこうの道具になるので、蠱毒師に狙われているためです。

けれど突然の出来事がきっかけで、夜斗はその禁忌を破ることになります。

それから夜斗が出会うのは、蠱毒師のもとで、道具として弄ばれながら生きてきた少年・三津丸。

さらに宮廷の片隅に封じられて暮らしてきた少女、大句。

都では栄華を極める平氏の清盛と院の仲たがいがおおっぴらになり、影で暗躍する蠱毒使いの思惑を軸に、お話は急展開をしていきます。
つらいこと、くるしいこと、いたいこと、たくさんの苦難がありますが、平易でやさしいふんいきの文章はなま臭さを感じさせず、お話の行方そのものに読み手をひきこんでくれました。

そして、きれいにまとまったすこやかなラスト。

夢とうつつを行き来し、生と死のはざまに立ち、神との約束を確認する。

そんなファンタジーらしいファンタジーでした。

これからお話の世界は戦乱の世に突入していくわけですが、かれらならばきっとたくましく乗り越えていくだろうなと思えます。

一生懸命な夜斗や、なげやりな三津丸、雄々しい大句の子供たちのキャラクターは児童向けらしく明快で好ましかったです。

猫ばばさまは賢者のスタンタードですねw

しかしわたしには、夜斗をずっと見守ってきた尾長が影の主役のように思えます。
淡々と描かれている人物の中でかれだけに萌えを感じてしまう。
つまり、尾長が好きだってことですがw

大げさなところがなく、おとなしめのたたずまいですが、とても愛らしいお話でした。

滝まくらの君
牧野 礼 照世
4265820182


余談。

ふと、ラノベと児童文学の違いは、過剰であるかないか、あるいは読み手に過剰な思い入れを期待するか否か、なのかなー。とか、思ったりした。

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