『天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘』

天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘
菅野 雪虫
4062175681


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読了。

朝鮮半島ぽい世界を舞台に、ひとと国の関わりなどを冷静な視点でやさしく描く、異世界ファンタジーシリーズの外伝。


北の大陸から突き出た半島にある三つの国。もっとも北に位置し草原と森の厳しい自然と向かい合う巨山の国は、ひとびとの努力で技術を進歩させ、文化的にも進んだ国となった。国王の正妃が生んだただひとりの王女イェラは、母親から疎まれた。国王には側室の生んだ王子が三人いたため、王と周囲の関心も薄く、イェラにそそがれるのはただひとり乳母の愛情だけだった。だが、イェラは生まれたときに占い師からとても強い運の持ち主であることを予言されていた。孤独に育つイェラだったが、天文台の〈星世見〉フェソンとの出会いが彼女の世界を一変させる。



『天山の巫女ソニン』シリーズで印象的な脇役として登場した、巨山のイェラ姫の物語です。
あの、野性的で凛々しい姫君がどのようにして生まれ育ったのか。
本編では語られなかったひととなりがよーく理解できた、とても興味深く面白いお話でした。

あの孤高の存在感がしあわせいっぱいなぬるい環境で育まれるわけはなかったのですが、それにしても厳しくて哀しいエピソードの連続。

占い師がイェラのものとは知らずに告げた予言の言葉や、イェラ本人のつよい精神力、そして本編での成長したあかつきを知らなければ読むのが辛かったかもしれません。

両親にも異母兄弟にも親戚にも愛されないイェラが、心許せる数少ない人物を次々に失っていくあたり、ほんとうに哀しくて切なかった。

こんな冷たい風の吹きすさぶような子供時代を過ごして、なお自分の足で立ち続けられる少女が、平凡な人物であるわけがありません。

ほんとうに強い運命をもった戦う王女様だったんだなと、しみじみ感じ入りました。

それにしても、イェラの父親の巨山王の存在感がハンパなかった。
人をたらし込む天性の資質を持ったカリスマなんですねえ、きっと、傍目にはすごくカッコいい人なんだろうなあ……どうにも怖いけどw

もともと、この話のいろんな悲劇要素はこの王様が原因なんだもんな……人間関係も、政治的な駆け引きも。

愛されないことを悲しんでいたイェラが、愛されなくてよかったと安堵する。
そのことも、なんともやりきれない気持ちになりました。

いろいろと深いお話だったです。このシリーズはすべてそうですが、やさしい言葉遣いやおだやかな文章で物事の奥深いところまで踏み込んでいく展開にあっというまに取り込まれてしまいますね。

とっても面白かったです。

孤高と悲哀にみちあふれた物語でしたが、ばあやのやさしい心遣いと、白い巨犬ムサの存在がオアシスでした。もふもふもふもふw

シリーズ開幕編はこちら。
天山の巫女ソニン 1 黄金の燕
菅野 雪虫
4062134233

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