『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』

アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧 啓裕
4488541046


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読了。

フランスの架空の土地アヴェロワーニュの中世から近世を舞台とした、魔物や魔法使いの跋扈する幻想怪異短編集。

収録作品は以下の通りです。


アヴェロワーニュ年代記
 アヴェロワーニュ
 怪物像をつくる者
 アゼダラクの聖性
 イルゥルニュ城の巨像
 アヴェロワーニュの媾曳
 アヴェロワーニュの獣
 マンドラゴラ
 ウェヌスの発掘
 サテュロス
 シレールの魔女
 物語の結末
 蟾蜍のおばさん

降霊術綺譚
 アフォーゴモンの鎖
 魔力のある物語
 妖術師の帰還
 分裂症の造物主
 彼方から狩り立てるもの
 塵埃を踏み歩くもの

時の彼方の神話から泡沫のロマンスへ 大瀧啓裕



アヴェロワーニュを舞台にした年代記ものシリーズと、降霊術をテーマにした作品とを合わせて編んだ短編集です。

同じ作者の『ゾティーク』が滅びを間近にした超未来の地球が舞台だったのに対して、フランス中世から近世とかなり地に足のついた土地が舞台だからか、わたしには『ゾティーク』よりかなり読みやすく感じました。

「ゾティーク」では文章のすみからすみまで新しく想像して脳内映像を作りあげねばならなかったのが、既知の土台が提供されるだけでこんなにらくちんなんですねえ……。

異世界ファンタジーというと西ヨーロッパ中世ふうと思われてるふしもあるし、それだけ周知されてれば読み手にも書き手にも敷き居が低いんだろうなーとあらためて感じました。

格調高く美々しい文章が描き出す、おぞましい魔物たちの活躍? が読みどころです。

それと、解説にもありましたが、ロマンスが随所に含まれてるのもとっつきやすい理由かも。
恋愛沙汰はなんといっても話に寄り添いやすいです、ただ怪奇現象が延々と続くのと比べればw

ひとの入らない暗く湿った森の中。
おぞましくも魅惑的な魔物や禁断の術にふける魔術師たち。かれらの牙や罠にかかり、底なしの地獄にすいこまれていく犠牲者たち。

華麗でダークな雰囲気がたまりません。
いくぶん癖がある訳文は好き嫌いが別れるかもしれないけど、クラーク・アシュトン・スミスの入門書としては『ゾティーク』よりこちらがいいかもしれないです。


超未来の滅びゆく地球を舞台にした短編集はこちら。
たしかクトゥルフものでもあります。

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧啓裕
448854102X


クラーク・アシュトン・スミスの短編集はもう一冊出ています。

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧 啓裕
4488541038



ふと、気づいたのですが、この雰囲気、なんとなく初期の栗本薫のファンタジーと似ているような。たとえば「トワイライト・サーガ」とか。
そういえば、グイン・サーガの後書きでクラーク・アシュトン・スミスが好きだと公言されていたような気が。

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