『奇貨居くべし 春風篇』

奇貨居くべし―春風篇 (中公文庫)
宮城谷 昌光
4122039738


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読了。

秦の始皇帝の父ともいわれる呂不韋の人生を壮大なスケールで描く、中国歴史小説の開幕編。


韓の国、陽てきに暮らし商家を営む呂氏の次男に生まれた呂不韋。母親をはやくに失った不韋は幼い頃から愛情のない不遇な暮らしをし、そのまま父の店で働きだしてからも異母兄弟とはことなる待遇に甘んじたまま孤独な生活を送っていた。そんなある日、店に山虞の彭存とよばれる男が訪れた。男のもたらした情報を確認するため、不韋は山へ旅をすることになった。もしや父親に捨てられるのではないかという不安を覚えた不韋は、同行する鮮乙と先導する彭存をともに信用できぬまま、広大な天地の驚きの中に足を踏み出していく。それが、呂不韋の人生を大きく変えることになるはじめの一歩だった。




面白かったです!

このところ、宮城谷作品にちと期待を抱きすぎていたかなあと思い始めてたのですが、これはまっすぐ主人公に焦点を当て、それも子供時代からストレートに描くという素直な展開だったためか、すんなりと話に入り込むことができました。

愛情を感じずに育った少年・呂不韋が、旅に出てどんどん視界が広がっていき、おのれの歪みや孤独の殻から解き放たれて、本来の資質を現し始め、そのありさまを敏感に感じ取ってくれる大人たちと出会って、さらに大きくひらかれ、育っていくさまが、スピーディーに躍動感を持って展開されていく。そのさまがとても楽しく、冒険小説的で心が踊ります。

呂不韋がものすごい美少年だってことが判明すると、それに拍車がかかる感じなのも楽しいですw

最初の不遇でかなり捻くれてたのが、簡単にほどけていくのがかなりあっけないんですがw それに元々の資質の開花するスピードにもびっくりさせられたし、善玉と悪玉のくっきりとした分かれ加減にも苦笑しちゃうとこがありますが、多分、それらの要素があるからこそ、明るい雰囲気ののびのびしたお話になってるんだろうなと思われます。

宮城谷作品のヒーローは、賢者で徳の高く、聡明であまり失敗をしない文官肌のひとたちなんで、これくらいの飛躍がないとドラマ性に欠けるのかも、しれないなーと思ったりしました。

そんな、優等生な呂不韋を支えて、育ててくれる、脇の方々。
受動的なヒーローにドラマを運んできてくれる、鮮乙や彭存、藺相如などといった、大人が魅力的です。

この巻では呂不韋はまだ少年ですが、つづきでは青年時代が描かれる模様です。


奇貨居くべし―火雲篇 (中公文庫)
宮城谷 昌光
4122039746

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