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『残穢』

残穢
小野 不由美
4103970049


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読了。

現代に起きた怪異を調べるうちに社会情勢や世情をふくめた土地の来歴を遡っていく、ホラー小説。


ホラー作家である主人公は、本のあとがきで怪異現象の体験談を募っていたことがあった。手紙のひとつに興味を持ち、差出人の女性ライターと連絡をとってみると、箒で畳を掃くような音がする現象は今も進行中だという。調べてゆくうちに怪異はその部屋だけではなくおなじアパートの別室や近隣の住宅でも起きていることが判明してゆく。もとから人が居つきにくい、流動性の高い地域であるのだが、数年どころか数ヶ月のうちにどんどん住人が入れ替わってゆく事実は二人を驚かせた。ゆっくりと地道に証人の聞き取りを続けてゆくうちに、怪異が怪異を呼ぶ連鎖とも言うべきつながりがあきらかになってゆく。



主人公がホラー作家で京都に住んでいてティーンズ向けのシリーズを書き下ろしていて……とくれば、著者さんが思い浮かぶのは当然。

この本はほぼ同時に出た『鬼談百景』のつづきというか、この連載を続けていた時に著者に起きていた事件、というような形の話になっているようです。

読んでいて、怪異現象の淡々とした描写には著者自身のどこまでも疑ってしまう姿勢があらわれているように感じられました。冷静で、まったく感情の混じらない、観察者のような書き方です。

それがちょっとレポートのようだなあと思ったり。
いや、レポートだったらもっと扇情的に書いてるかな。

怪異現象のもとを探るために体験者や土地の過去を知る人物に聞き取り調査をしていく過程は、ほとんどミステリーの聞き込みみたいな感じでした。

あ、そうか。ミステリーの書き方に似ているのかも。
それも、本格派の謎解きを主体にしたミステリの、鍵となる事実を並べていくような感じですね。

というわけで、途中まではほとんどミステリを読んでる気持ちでした。
賃貸の事故物件の設定とか初めて知りました。

面白かったのは土地の来歴は土地に人が住み続けない限り受け継がれて行かないのだなと、いう事実です。しかも、情報を共有できる人間関係がないとだめなんですよね。

目次を見るとわかるのですが、話は現代からバブル崩壊、高度成長期、戦後の混乱期、戦前とどんどん時代を遡っていきます。

そして、その時代の様々な出来事によって、その土地が様々な形で利用されてきたことがわかってくるのですが、地縁のしっかりとしていた古くからの土地でも、どんどん人が流れ出たりあらたに入り込んだりして、人間関係が分断されてしまい、来歴をたどるのが困難になっている現状が、ちょっとショックで、でもとても納得でした。

本来の怪異の話よりも、そっちのほうがわたしには怖かったです。

それと、穢れの概念がよくわかったのが収穫かな。
罪とは違う、異常な状態というのが腑に落ちました。
だから伝染していくのが、一番怖いのですね。なるほどー。

というわけで、本来の怖がるというところでなく、多分民俗学や社会学の方で楽しんで読んでしまいましたが、とてもおもしろかったです。

本作の出来事と同時進行で書かれた(笑)実話怪談の短篇集はこちらです。
鬼談百景 (幽BOOKS)
小野不由美
4840146519

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