『魔使いの悪夢』

魔使いの悪夢 (創元ブックランド)
ジョゼフ・ディレイニー 田中 亜希子
4488019889


[Amazon]

読了。

中世イングランドを舞台に魔使いの修業をする少年と師匠と魔女の素質を持つ少女との関わりと共に、魔王との戦いを地に足のついた文章で描くファンタジー。シリーズ第七巻。


七番めの息子の七番めの息子である少年トムは、魔のものを感じる能力を持ち、魔使いグレゴリーの弟子となった。アリスは魔女の娘だが、トムを魔王の力から守る絆を持っている。ギリシャでの過酷な戦いを終えた三人は、ようやくたどり着いた故郷チペンデンで敵国軍に蹂躙された無残なありさまを目の当たりにした。魔使いの家も焼かれ、代々受け継いできた貴重な文献はすべて失われた。さらに拘束していた邪魔女ボニー・リジーの逃走が発覚。三人は戦火から逃れるため、アイリッシュ海に浮かぶモナ島を目指したが——



面白かったですー。

暗くシビアな状況がつぎつぎに襲いかかるなか、トムは師匠の老いと直面し、アリスとの危うさを含んだ絆はどんどん深まっていき、と、目の離せない展開がつづきます。

痛い、寒い、疲れた、ひもじい、湿気てるという感覚が澱のようにまといつく描写も健在です。

この時代はいったい何世紀なんだろうかという疑問がいつまでも解決されないのが気になるのですが、中世から近世に変わるあたりなのかな? チペンデンを襲った敵ってどういう勢力なんだろう?

いずれにしろ、今回の最大の問題は邪悪な魔女ボニー・リジーなんですが。アリスの母親なんですよねえ。

もうひとつ新たな展開は、シャーマンが登場したことでしょうか。
モナ島に巣くう魔物は人間の生命力を吸い取るバゲーン。
それから離人(アブヒューマン)、鳥魔女が出てきます。

このシリーズ、当初は魔女のことがあまりにも否定的に描かれててトムのお母さんだけが別格というのがちょっとひっかかっていたのですが、アリスが成長するのに従い、作者の意図はべつのところにあるような気がしてきました。

魔使いのグレゴリーはアリスが魔女にならないようにそれはしつこく魔法を禁じ、叱責するのですが、アリスは現実にあわせた実際的な考えから、その場で必要だと思うと積極的に魔女の術を使います。そのことをトムも次第に容認しつつあります。

それに、邪魔女と善魔女という線引きですが、これはもう人間に敵対するかどうかの魔女個人の意志によるもので、魔女の力のありかたとは関係のないことのように思えます。

魔女も魔物も、人間の価値観が区別しているだけで、たぶんにそれは生存競争的な分類なのかなあなどとぼんやりと思ったり。

骨魔女も血魔女も人間にとっては恐ろしい邪悪な存在だけど、それは彼女たちが選んで生まれたわけではないような。あれ、違うのかな。自分が何魔女になるかは選べるのだろうか?

ようするに魔女も魔物も人間も、大自然の一部ってことのような気がするのです。

魔王がどのあたりに位置するのかはまだわからないけれど。

それと、魔王が封印されてる丘の名前がウォードストーンなのは、トム・ウォードと関係があるのだろうなと、いまさら気がつきました。

まさか、ここで話が円環構造になったりしたらどうしよう。どきどきw

あとがきによるとシリーズは全十巻になることが決まったそうです。
それと外伝の短編集も翻訳されるそうです。

調べてみたらすでに一冊刊行されてました。これがグリマルキンのお話なのかな。早く読みたいです。
魔女の物語 (〈魔使いシリーズ〉外伝) (創元ブックランド)
ジョゼフ・ディレイニー 田中 亜希子
4488019897

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する