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『クドリャフカの順番』

クドリャフカの順番 (角川文庫)
米澤 穂信
4044271038


[Amazon]

読了。

端正な文章で描かれる青春ミステリ小説「古典部シリーズ」の三冊目。


神山高校は文化部の活動が盛んでカンヤ祭といえば地域の一大イベントである。お祭りムードの高まる学園で、省エネがモットーの一年生・折木奉太郎の所属する古典部は、重大な問題に直面していた。文化祭で販売する文集「氷菓」が手違いで大量に印刷されてしまったのだ。短い協議の結果、販路拡張と知名度のアップが急務と決定した。完売を目標に掲げ、販路拡張を受け持つことになった部長・千反田えるは校内を歩き回るうちに、「十文字」を名乗るカードと引き換えに小物が盗まれる事件に遭遇する。




面白かったー。

シリーズ開始時から言及されつづけていたカンヤ祭が、ついに本番です。
これまではホータローの一人称単視点で全編が描かれてましたが、今回は古典部四人がそれぞれ語り手になる一人称複数視点での描写となります。
でないと、古典部の部室からほとんど出ない話になりますからねえ、ホータローめww

というわけで、これまでホータロー視点でしかわからなかったほかの部員の、それぞれの環境や視点や考え方があきらかになって、ついでに彼らの見ているホータローがどんなやつなのかもわかる、たいそう興味深い展開でした。

一番意表を突いたのは、千反田さんでしょうね。
豪農千丹田家を背景に持つ環境は、それだけで普通とはちと色合いが異なりますし、彼女の素朴な好奇心に充ち満ちた視点で描かれるシーンは、その天然性を含めて、とっても愛らしく楽しかったです。カンヤ祭開幕式のところでは思わず笑ってしまいました。

ホータローへの好印象がほほえましく、それでもかれを「とても腰が重い」と評してるあたりにニヤニヤしました。

里志くんは以前からホータローに思うところがあるとわかってました。
なるほど、こんなことを考えていたんだなあ。
プライドと競争意識にどこかで折り合いをつけたいと思うのは、不安だからかなと思いました。
諦めのポーズをしていてもかれは自分の可能性をまだ信じていたいのだと思います。
挑戦しなければしくじることもない。自分からすべての芽を潰したくないのですね。

かれが摩耶花ちゃんに距離を置きたがるのがわかる気がしました。

それから摩耶花ちゃん。
ストレートな物言いの反面、自分の感情をさらけ出すのはちょっと苦手な摩耶花ちゃんは、どうやら氷菓と一緒に個人的な趣味のなにかも印刷所に発注していた模様です。本来はそちらが二百部だったんでしょうね……うんw

すばらしい作品への憧れと、自分の実力との距離の認識は、ものを創る側になりたいと思う人間にはかならず訪れるものです。
漫研のエピソードは、既視感とほろ苦さに若さがあいまって、なんともいえない心地になりました。

タイトルの理由も、そういえば考えてみればこのシリーズ自体が、自分の可能性を探りつつ限界をおそれる若者たちという、とても青春的なものを描いているのかなあと思ったり。

期待する、という言葉が含む多くの意味に、いまさらながら思いをはせたりしてしまいましたわ……。

そんな感じで、四人それぞれがいろんなことを感じながら、にぎやかに進んでいくお祭り=文化祭の様子がとても楽しいお話でした。

一番盛り上がったのはお料理研の対抗戦イベントかな。
千反田さんの意外な一面とやっぱりな一面がかわいかったのと、ホータローのわらしべプロトコルがかみ合う瞬間に興奮しました。

それにしても、ホータロー姉。
相変わらずの暗躍ぶりで、どこまで弟の状況を把握してるんですかねえ。
わたし、気になります。

シリーズのつづきはこちらです。
遠まわりする雛 (角川文庫)
米澤 穂信
4044271046

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