『盗人の報復 ヴァルデマールの絆』

盗人の報復―ヴァルデマールの絆 (C・NOVELSファンタジア)
マーセデス・ラッキー 竹井
412501115X


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読了。

中世西洋風異世界を舞台に、貧民街で生まれ、自分の才覚で生きのびていく少年の冒険を描くファンタジー。
ヴァルデマール年代記の一冊。


スキッフは母親を亡くし、貧民街にある伯父の酒場〈柊の薮〉亭で従兄のカルチェンに虐げられながら暮らしていた。ろくな食事は寺院で学ぶたびにもらえる朝食のみで始終空腹を抱えていたかれは、金持ちの屋敷に忍び込んで盗みをすることを覚え、それだけの才覚がある自分を誇ってもいた。ある日、いつもどおりオーサレン卿の館に潜り込み昼寝をしていたスキッフは、同業者の少年ディークと出くわした。スキッフよりも年かさでスキッフよりもまともな身なりをしたディークは、スキッフを自分のねぐらに連れていってくれた。そこでは両足の無い男ベイジーが盗みの高度な技術をさずけながら少年たちとともに暮らしていた。



シリーズで存在感あふれる脇役として活躍していた元盗賊〈使者〉、スキッフの生い立ちの物語です。

というわけでこの話の主役はスキッフなのですが、この話でもっともインパクトがあったのは貧民街です。主役は貧民街と言ってもいいのではないかと思ってしまうほどすごい所でした、貧民街。

スキッフの暮らす、伯父所有で従兄が支配する酒場〈柊の薮〉亭の描写からしてすごかったです。
労働環境の酷さはある程度予想の範囲内でしたが、商売の汚さがわたしの度肝を抜きました。

これって客にだす食べ物じゃないだろう。
金とって何飲ませてるんだ、この酒場。

その他にも目からうろこというにはあれな、常識を覆されるようなところがありました。
それはもういろいろとありました。

こんな下層階級の暮らしを読んだのは初めてです。
フィクションにもあんまりくわしくは出てこないですよね、貧民街の暮らしって。
日常を細々と描くのが持ち味のラッキーだから、ここまで書いたんだろうなー。
ここに暮らしたいとはぜっっったいに思わないけど、かなり興味津々でした。ええ、ほんと。

そんな荒んだ地区に暮らす人々に、他人のことをおもいやるようなゆとりがあるわけもなく。
殺伐とした世間で親のない子供が生きていくには自分の才覚を頼りにするしかないのでした。
信じられるのは自分だけ。
他人をあてにすると馬鹿を見る。

スキッフもそうやって暮らしているわけですが、ある出来事をきっかけに変わっていくというのが、このお話です。

スピンオフとして書かれた物だと思うので、読み手はスキッフがどうなるのかを知ってて読んでる人が多いのだろうなと思うのですが、かれがなるものよりも、かれが得る物のほうが重要に感じられる話でした。

とくに、ベイジーとアルベリッヒとの出会いは特別でしたね。
そして、〈供に歩むもの〉キムリーは別にいなくてもいいような気がしてしまったりしました←おいw
キムリーが選んでくれないと使者にはなれないのだから重要なんだけれど、ただのお友達みたいなんですよね。

これはこのシリーズ全般言えることだけど、〈供に歩むもの〉と〈選ばれしもの〉の絆があまりにも日常的に描かれてるので、スペシャルさがうすいというか。それはちょっとわたしには不満なところなんですが。まあ、いいや。

シリーズでおなじみの登場人物がちらちらと顔を見せてくれるのが楽しかったです。

わたしの今回の一押しは、アルベリッヒ。
かれもこれまでのシリーズで何度も出てきてるひとですが、こんなひとだったんだ、とびっくりしました。

そのアルベリッヒの話が単独で出ているじゃないですか。
そうと知ったからには、これは読まねばなりません。

追放者の矜持 上 - ヴァルデマールの絆 (C・NOVELSファンタジア)
マーセデス・ラッキー 竹井
4125011974

追放者の矜持 下 - ヴァルデマールの絆 (C・NOVELSファンタジア)
マーセデス・ラッキー 竹井
4125011982

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