『よろづ春夏冬(あきない)中』

よろづ春夏冬中
長野 まゆみ
4163234500


[Amazon]

読了。

現代日本を舞台にした、端正な文章でつづられる怪談風味の日常的短編集。

収録作品は以下の通りです。


希いはひとつ
タビノソラ
最低の一日
海辺の休日
飛ぶ男
待ちきれない
花の下にて
アパートの鍵
雨過天青
ウリバタケ
獅子座生まれ
雨師
空耳
猫にご飯



基本はおとこどうし。

『カルトローレ』『デカルコマニア』で作者さんの作品にふたたび目覚めたわたしですが、読みはじめて、あう、となりました。

初期の綺羅綺羅した浮世離れした作品が、舞台が日常にシフトし文章にも装飾的なところが減ってきたころ、おとこどうしを描く筆がだんだん直接的になってきて、わたしは長野作品から離れたのですが、この短編集はそのころの雰囲気に近かったのです。

とはいえ、ちょっと違うのがお話がたんなるおとこどうしの情事だけはない、どちらかというとメインが怪奇現象ぽいというところ。

怪談といってしまっていいのかどうか迷うところですが、夢で時空を超えたり、異形のものがでてきたり、時間がループしたりと、不可思議な出来事に巻き込まれる話の連続で、おとこどうしを意識しなければ、たいそう面白いお話ばかりでした。

文章は淡々として無駄がなく、どちらかというと無機質で、物語より目だつようなところはありません。話の中にすっと入っていけるさりげなさ。日本の四季がそこかしこに折り込まれているのが印象的。

しかし、完全に視野から追いだすには濃密なおとこどうしなので、読むペースは滞りがち。
文章の色気も少ないのに、ふしぎとそういう場面はにおいたつんですよねえ;
短編集なので、手を変え品を変えという感じになったのも腰が引けた原因かも。

惹句に「長野まゆみの新境地」と書いてありましたが、これ、恋愛対象のことではなかったのですね。うん。

というわけで、面白かったのです。
そのいっぽうで、わたしはおとこどうしは苦手だと再確認させてもらった本となりました。

これからはもっとちゃんと確認してから借りることにします。

単行本を読みましたが、例によってとうに文庫化されてます。
よろづ春夏冬(あきない)中 (文春文庫)
長野 まゆみ
4167717468

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する