『ロスト・グレイの静かな夜明け』

ロスト・グレイの静かな夜明け (コバルト文庫)
野村 行央 竹岡 美穂
4086016591


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読了。

一度死んだ少女が“霧の壁の向こう側”で目覚めたのちの生活を描く、夢のような距離感のある不思議な物語。

2011年度ノベル大賞受賞作家の文庫デビュー作品。


両親に愛されて育った少女アズサは事故によって十五歳のときに死んだ。霧の壁の向こう側には死者の甦る国があるといううわさを信じて、アズサの両親は彼女を水葬にする。小舟に乗って霧の壁を越えたアズサが目覚めたとき、かたわらにはカーゴと名乗る少年がいた。少年は近くの町ライオールのそばまでアズサをつれていったが、中に同行しようとはしなかった。ライオールは武器商人マニージの支配する町であり、カーゴはマニージと敵対していたのだ。アズサは孤児たちをひきとっている教会に身を寄せて暮らすことになった。



ふしぎなお話です。

霧の壁によって隔てられた世界、というところから不思議感が漂います。
死者だけが越えられる霧の壁。
そのむこうで目覚めたアズサはたしかに一度は死んだ少女です。

しかし、その世界は死者たちだけの世界ではないようです。
そこで生まれて、死んでいくものたちもちゃんといるのです。
そして、そこにも武器や戦争がありました。
他人を利用して使い捨てていく権力者もいます。

ひとびとは神に祈ります。
けして答えてはくれない神に問いつづけ、すがりつづけます。

死者が生き返る、という以外には現実となにもかわらない世界。
いったい、この世界はどういう世界なのだろう。

読みながら考えていたのはこのことばかりでした。

距離を置いた起伏の少ない文章で淡々とつづられる出来事は、まるで夢をみているように思えます。

娯楽小説にはめずらしい、結末の予想できない物語でした。
ただ、結末のつけかたは娯楽小説のものでしたが。

説明の少なさや抑制された感情表現は文学的だったので、最後は正直、あら、と思いました。

物語全体の雰囲気はとても好きです。

世界設定はちょっとアニメの『灰羽連盟』に似てるような気がしましたが、『灰羽連盟』に比べるとこぢんまりとしてしているかな。

万人受けはしないような気がするお話でした。
コバルトで出たことが不思議です。
レーベル的には角川書店の銀の匙シリーズのほうが似合っていると思います。

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