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『魔女の物語 魔使いシリーズ外伝』

魔女の物語 (〈魔使いシリーズ〉外伝) (創元ブックランド)
ジョゼフ・ディレイニー 田中 亜希子
4488019897


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読了。

たぶん近世のイギリス周辺を舞台にした、知識と体力で魔物と戦う魔使いとなった少年の成長を描くファンタジーシリーズの外伝短編集。

収録作品は以下の通り。


メグ・スケルトン
ダーティー・ドーラ
グリマルキンの話
アリスと〈脳食い魔〉
バンシー魔女



面白かった!
すごく面白かった!

本編は魔使いを中心にしていますが、この本は魔女を中心に据えたお話集となっています。

「メグ・スケルトン」は、主人公トムの師匠ジョン・グレゴリーの若き日のお話。
ロマンスです。それもたいそう破滅的なロマンス。
グレゴリーじいさんのトムとアリスへの態度の理由がよーくわかりました。
とくにアリスに対して。
いつもつっけんどんだけど完全に排除したりしないのには、そういうわけがあったのですね。
彼女を見てるととても複雑な気持ちになるんだろうなー。

「ダーティー・ドーラ」はディーン一族に属する死んだ魔女のお話。
魔女の行う祭り、魔女と魔王の関係、魔女狩りと、魔女に関するあれこれがてんこ盛りです。
人間の行う水審の残酷なこと。いちど疑われると魔女でなくても殺されてしまいます。

これを読んでいると魔女と人間の境目ってなんだろうと考えてしまいます。
魔女として生まれるのは血のせいで、本人の責任ではないのに。
魔女を差別する人間の理由は、なんとなく女性性への嫌悪のような気がしてしまう。

たしかに邪悪な魔女や、存在するだけで人間に危険をおよぼす魔女もいるのだけど、邪悪なものは人間の嫌悪に対してゆがんだもののように思えるし、存在が危険なものは魔女の他にもたくさんいるし。

魔女の素質が女にしか受け継がれない(あるいはあらわれない)のと、女性への潜在的な恐怖の念が結びついているような。

うーん、なんだかまとまらなくなってきたわ。

「グリマルキンの話」はマルキン一族の暗殺者、グリマルキンのお話。
シリーズ主役のトムの物語にも大きく関わっているグリマルキンですが、その過去は壮絶なものでした。
冒頭から殺伐としたシーンの連続ですが、ただひとりの暗殺者の座を得るための戦いがまたすごい。
舞台となる〈魔女ヶ谷〉の設定からして仰天ものです。

そういえば「ダーティー・ドーラ」は死んだ魔女と書きましたが、魔女は死んでも活動できるらしいです。
骨魔女といい、ラミア魔女といい、このシリーズに登場する魔女たちは、ほかの魔物たちも含めて、ものすごく醜くグロテスクな性質を持ってますねえ。

昨今は魔女という言葉にさほどマイナスのイメージがないけれど、昔の西欧の人々の嫌悪感がこれでもかと具現化されてるみたいな魔女たちの、パワフルな負の存在感が、このシリーズにホラー的な雰囲気をもたらしていると思います。

子供向けにさらりと流してあるけれど、かなりグロいです。
それにどろどろで不潔で寒い。←ほめてる。
だから清潔さと乾燥と炎の温かさがとても貴重なものだとわかります。
近世の臨場感てこんなのかなと思います。

「アリスと〈脳食い魔〉」は、トムと出会う前のアリスのお話。
叔母に強制されて魔女修業を命がけでさせられるなか、いつも前向きに全力で道を切り開こうとするアリスのしぶとさに感動しました。

しかし、これもグロい話だなあ……w

「バンシー魔女」はトム視点に戻って、ビル・アークライトのもとで修業していた間の出来事が描かれています。

本編では「悪夢」で初めて出てくるアイルランドですが、ここですでにアイルランドの魔女と関わっていたことが判明します。

知性派のグレゴリーと違ってアークライトは肉体派。
トムはここで老齢のグレゴリーではできない武闘の訓練をほどこされていた模様です。
基礎体力のアップから魔物に退治するときに役に立つ体術まで、道具が役に立たないときのための物理的な攻撃力を磨くやりかたは、ぜんぜん洗練されてなくて、まさに昔の体育会系でした。

おかげでよけいにアークライトの個性が浮かび上がって、面白かったです。
しかも、のちのアークライトの運命を暗示するような出来事もあったりします。

この外伝集、どれも独立していながら本編に有機的にからんでいる話ばかりでした。
なのでシリーズ最新刊(「悪夢」)まで読んでから手に取ることをお勧めします。

ダークで気味悪くて寒くて奥深くて不思議な、たいへん好みの本でした。

シリーズ開幕編はこちら。
魔使いの弟子 (sogen bookland)
ジョゼフ ディレイニー 佐竹 美保
4488019528

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