『石霊と氷姫』上下巻

石霊(せきれい)と氷姫〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
西魚 リツコ NA2
4344818601


[Amazon]

読了。

かっちりと構築された異世界をえがく映像的な文章とドラマティックな展開が素敵な、詐欺師の女の子が主人公の異世界陰謀活劇ファンタジー。


吼える海獣の身体からうまれたと言われるターブの地。南の藩王パースニルとの同盟により高原の民の乱が平定されたことを祝う式典で、ハモンターブの第二王女プリディオーネは、東の藩王マドラスから珍しい石霊ジァンのやどる石を、世継ぎのトバル王子には学者たちから遊び相手として美童を贈られた。九年後、パースニルとハモンターブを結ぶ泥の道で、僧正の弟子を名乗るアルは、宿代が払えずにつるし上げられている若者を口先三寸で助けた。若者の名はテオグラード。石から石霊ジァンを生み出して育てるジァンクルだった。かれはかつて自分から汚い手口で大切なジァンを取りあげた人物への復讐を誓っていた。



面白かったー!

壮大でオリジナリティーある世界設定とドラマティックかつシビアなストーリー。
映像的で、なおかつ現実的な描写も健在。

主人公が自分から積極的に動く人物だからか、これまでにもましてストーリー展開が速いです。
騙り屋、つまり詐欺師がヒロインというのも、珍しいような気がします。
ヒロインの言動がいちいち明るいのにも好感が持てます。

恋もあります。
じつにあわく淡々と書かれているのでうっかりすると見逃しちゃいそうなんですけどもw

いつもどおりの作者さんの世界もあります。
権力に執着する美丈夫と腰ぎんちゃくの商人対学者集団の陰謀劇。
猪突猛進だったり、気高く融通が利かなかったりする部族の長たち。
河を住み家とし、泥まみれでくらすひとびと。
特権階級から最下層民まで、描かれるディテールが奥行き豊かです。

それに石に宿る不思議なジァン。
船での戦い。戦闘シーンの迫力と悲惨さ泥臭さ。

二冊の中に読みどころが満載です。

コミカルだったり、痛快だったりするシーンには笑いましたし、タイトルの氷姫の物語にも、しみじみとした味わいがありました。

これまでの作者さんの物語はとても現実的な苦さを含んだ結末を迎えることが多かったのに反し、明るく希望のある、風通しのよい物語だったなあと思います。

一言で言うと、とってもエンタメしてる。

映像作品の素材としてはすごく向いてるんじゃないかなと思います。

欲を言うと、読み手の心に直接刺さってくるような言葉やシーンがあればなと、そうするともっと受けるんじゃないかなと思うのですが。

文章が映像的というのは、人物を外から見ているシーンが多いということなので、その分、言葉の表現としては遠回しになるんじゃないかと思うのですよね……。

でも、わたしはそういう、読み手に多くを預けてくれてるところが好きなんですが。

わたしにとってはこれからも読みつづけていきたい作家さんです。

石霊の話はまだなにかありそうなんですけど、レーベル自体がなくなっちゃったから読むのは難しそうですね。残念です。

石霊(せきれい)と氷姫〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
西魚 リツコ NA2
4344818970

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する