『空の都の神々は』

空の都の神々は (ハヤカワ文庫FT)
N・K・ジェミシン 佐田 千織
415020537X


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読了。

世界を支配する一族の後継者争いに巻き込まれた娘が、敗れて使役される神々と出会い、王宮の陰謀の中で試行錯誤する、異世界ファンタジー。

面白かったです。

神々の戦いに勝利した昼の神〈天空の父〉イテンパスを崇め、敗れた神を兵器とする権限を与えられて世界を支配するアラメリ一族の、空に浮かぶ宮殿都市スカイ。

アラメリの世継ぎだった母親を持ち、その母の死後、突然祖父であるアラメリの長に呼び出された娘、イェイナがヒロインです。

祖父デカルタは自分の後継を決める日を目前に控え、その候補の中にいきなりイェイナを放り込んだのでした。

イェイナの母キニース廃嫡の後、候補と目されてきたのはイェイナのいとこのふたりです。
そのうち従姉妹のシミーナがその弟レラードを圧倒しています。

アラメリ一族は苛烈で容赦ない性格を受け継いでおり、突然権力争いに巻き込まれたイェイナは孤立無援のなか手探りで生きのびなければならなくなりました。
そしてイェイナはもうひとつ、母を暗殺した犯人探しを決意していました。

その彼女の前にあらわれたのが、イテンパスに敗れ、人間の肉体に拘束されている神々です。

アラメリ一族から解放されるために、かれらはイェイナに協力を申し出てきたのです。

嘘と真と沈黙の間でされる駆け引きの中、イェイナはイテンパスの兄である夜の神ナハドに魅了されていくのですが……。

華麗な神々の千夜一夜を想像していたので、それとは若干違いました。
でも、宮廷での命を懸けた駆け引きや、異世界の異世界らしい社会システムや歴史が作り込まれている物語世界や、肉体に拘束された神々のそれぞれが魅力的で、どんどん読んでしまいました。

この世界にもともとあった三神のしくみが興味深かったです。
夜と昼、そして黄昏。
夜は変化を促し、昼は規律を重んじ、黄昏は生み出していく。

三神の戦で死んだとされる黄昏の神エネファの落とし子たちの生まれた経緯は、なんとなくタニス・リーの『闇の公子』を彷彿とさせました。

そもそも、メインのイェイナと夜の君のロマンス……がちょっとタニス・リーぽいかなと思うのですが、文章の平易なこと、全体的な明晰さなどの要素が物語をもっと理性的な雰囲気にしていますね。

魔法がふんだんに出てくるのに、それが昇降機などで表現されるため、一見するとSFみたいな感じを受けたりもしました。

しかし、このクライマックスと結末は、ファンタジーでなければムリでしょう。

わたしがツボだったのは「神々の味」という表現です。
面白いというか、納得というか、なるほどでしたw

読み終えた後、神話の時代の終焉だなーと、余韻に浸りました。

この話には続編があり、翻訳も既に出ています。
入手済みなのでそのうち読みたいと思います。

世界樹の影の都 (ハヤカワ文庫FT)
N.K. ジェミシン N.K. Jemisin
4150205507

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