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『影の王国』上下巻

影の王国 上 (創元推理文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド 鍛治 靖子
4488587062


読了。

陰謀と魔術と人びとの因縁を描く、濃密な異世界ファンタジー。


森の国ウィールドで第三王子が殺された。犯人は王子に手込めにされそうになった侍女だという。国璽尚書ヘトワルの命令で事態を収めにきたイングレイは、第三王子ボレソが王位を簒奪するために禁止された魔術に手を染め、その儀式の最中に事が起きたと知る。被害者であり、加害者である娘イジャダは目を見張る美貌と正義を信じる無垢な魂の持ち主だった。イングレイは王子の遺体と囚人を連れて国璽尚書のいる東都をめざすが、その道中、意に反してイジャダの命を無きものと試みる自分に驚愕する。



面白かったあ!!

『チャリオンの影』『影の棲む城』につづく〈五神教シリーズ〉の第三弾です。
が、前作、前々作とは異なり、舞台も登場人物も別の土地・人物となっているため、独立して読めます。

物語は現王の死が間近に迫る王国での第三王子の死から始まり、王位への陰謀が疑われます。

同時に、第三王子ボレソが手を染めていた、いまは禁じられた森の民の魔術がクローズアップされます。

物語の主人公イングレイは、その魔術のために深い傷を負った人物だったため、ボレソの行った儀式がひきおこした状況をひとりだけ認識することになります。

少年のころに起きた事件のために辛酸を舐め、すっかりシニカルになっているイングレイが、過去の出来事をいやでも思い出させる事態とどう向かい合い、つぎつぎに変化する状況にどう対処していくかが、読みどころ。

かれが心の中で悪態をつきつつも、すべてに距離を置いて放り出すことができない理由も、見逃せません。

するうちに、ダルサカに虐殺されたという凄惨なウィールドの過去が浮かび上がり、事件の周辺にたちあらわれる謎また謎が、物語を先へ先へとぐいぐい進ませていきます。

印象的な人物がたくさん出てきますが、まず、飛び抜けて鮮烈なのは、第三王子殺人事件の下手人であるイジャダさん。

まだ十代なのにさんづけしてしまうのは、美貌と気の強さと、まばゆいような正義への信頼のせいでしょう。彼女が意図せずイングレイを振り回して、肉体的疲労に精神的苦労をつけ加えていくさまがたまりませんw

それから、イングレイの従兄弟で王女ファラの夫でもあるウェンセル。
身体に障害があり、気の弱い少年だったというウェンセルは、イジャダさんがファラ王女の侍女だったというつながり以上にこの件に関わっている模様です。

登場するたびに意味深なほのめかしをしてイングレイをいらだたり、驚愕させたり、人の悪さも一級品w

イジャダさんの知り合いのハラナさんは、医師神官にして魔術師神官という希有な立場である以上に周囲を呆然とさせる強烈な個性の持ち主。

庶子神教団のレウコ神官は、穏やかさの下に隠されてますが、なかなかしたたかなお方の模様。

イングレイの仕官する国璽尚書ヘトワルさんの威厳ある有能っぷりが渋い。
ビアスト元帥王子は生真面目かつ、誠実そうなお人柄で、ちょっと気の毒な感じ。

動物たちも出番は少しですが、生き生きと描かれていて楽しいです。

そして熊の飼い主、ジョコル王子はたいそう愉快な優雅な野蛮人でした。

物語の要所要所でたちあらわれる、魔術的な視界の濃密さも堪能しました。

聖王と精霊戦士と巫師という、古代ウィールドの魔術的な関係が生み出したおそろしい袋小路と、それを背負わされてきたひとびとの歴史が痛々しく、すべてを清算するためにすべてを犠牲にしてつきすすむ非情な決意の切迫感に圧倒されました。

深い闇、暗い夜、そして訪れる朝。

これこそドラマティック。

ビジョルドのお話はつねにドラマティックですね〜。

ところで、主人公のイングレイは、前作までの主人公に比べると若い(二十五歳だそうです)ですが、過去の辛い経験のため斜めな性格。しかし、やっぱりまだ若いなと思わされるのは、かれの動機付けが保護欲や忠誠心ではないあたりでしょうか。

笑顔を褒められて、たぶん心の中では赤面してたんではないかと思うイングレイ君は、わたしにとっては可愛いヒーローでした。苦労する姿を眺めて楽しめるヒーローでもあったw

ドツボだったのは、ホースリヴァ氏伯ウェンセルです。
かれの慇懃かつ横柄なせりふ回しが好きで好きでたまらず、そこだけ何度も読み返しておりました。

魅力的な悪役っていいなあ、と久しぶりに熱くなっておりますw

影の王国 下 (創元推理文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド 鍛治 靖子
4488587070

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