『太陽の石』

太陽の石
乾石 智子
448802498X


[Amazon]

読了。

魔道師きょうだいの確執と帝国の衰亡を描く、色彩豊かな異世界ファンタジー。


コンスル帝国最北西端にある霧岬で赤子の時に拾われた少年デイスは、養父と同じ天文学者になる夢に家族から猛反対を受けていた。栄華を誇った帝国はいまや瓦解の一途をたどっており、気候の変化で霧岬付近では空を見ることも出来ない。人々が貧しい暮らしを送るある日、黒ずくめの男が現れ、自分は魔道師のリンターだと名乗った。リンターといえば帝国を傾けた魔道師のイザーカトきょうだいのひとりで、霧岬でときおり煙を吐き振動するゴルツ山は戦いのときにリンターがつくったものとされていた。しかし、それももう三百年も前のはなし。不信感をあらわにする村人たちの目の前にリンターは貴重な水を湧き出させ、かわりにデイスとその友人ビュリアンを差し出せと要求した。



面白かったー。

前作『魔道師の月』と同一世界のお話ですが、ずっと時代が下って帝国がもうさんざんな状況になっています。

中央権力の腐敗に行政組織の劣化。地方では反乱が相次ぎ、他国からの脅威にさらされてもいる。

霧岬では魔道師の戦いのとばっちりを受けて火山が隆起し、吐きだす噴煙で空が覆われ、農作物に大ダメージが。

ひとびとはその日を生きていくのでせいいっぱい。

そんな霧村で将来に期待と不安を持つ少年デイスが今回の主人公。

かれが旅をするうちに、帝国の状況があきらかになっていきまして、それがけっこう衝撃的でしたが、基本的なトーンはそれほど暗くはありません。

むしろ、登場人物がかなり増えたので、けっこうにぎやかになりました。

お姉さんとか幼なじみとかが始めからでてくるわけですが、そのあとにも複数人の主要人物たちが登場。

いままでよりも物語におけるキャラクターの比重が大きくなって、一般的には読みやすくなったのではないでしょうか。

三百年前に“きょうだい喧嘩”で帝国を混乱させたイザーカトきょうだいの、それぞれにそれぞれの思いを抱えた来し方が、興味深かったです。

例によって過去の因縁がめぐって現在にいたる、魔道師たちのお話なのですが、きょうだい間の親密度とか力関係とかがからんでくる分、人間ぽくなったなあ、と思いました。

きょうだい間の相手に対する必要以上の厳しさやあいまいに逃げてしまう場当たり的な態度って、けっきょく期待と甘えなんですよねえ。血が繋がってるから、というよりも、同じ親と時間と状況を共有してきた、てことが大きいのかな。

このあたりの人間関係と物語の距離の取り方、ちょっと萩尾望都に似ているなと感じました。

それと、前作で気になっていた、担いきれない闇を抱え込んだ魔道師というのがどうなるのかというお話。

こうなるのかー、という気持ちと、このスケールでおさまるのはファンタジーだからなのかなという気持ちが、半々くらいな感じでした。

闇を抱え込むということについて、わたしの頭はぐるぐるまわっているようです。
魔道師の力と闇の関係が気になるー。

ところで、キャラクターとしては、きょうだいの下から二番目のイリアがいろいろ楽しかったです。
デイスを拾ったお姉さんのネアリイは、ちょっと苦手な部類の女の子でしたが、彼女もものすごくキャラが立ってましたね。
イスリルの魔道師ザナザもいい味出してましたし。

わたしとしては、お兄さんのリンターが一押しですがw

喜ばしいことに作者さんは順調に新作を刊行されてます。

おなじ世界かどうかはわからないけれど、つぎはこちらを読む予定。
闇の虹水晶
乾石智子
4022510358

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