『天山の巫女ソニン 江南外伝 海竜の子』

天山の巫女ソニン 江南外伝 海竜の子
菅野 雪虫
4062181657


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読了。

おだやかな文章でシビアな社会を描きだす、異世界ファンタジーシリーズ『天山の巫女ソニン』の前日譚。


温暖な気候で豊かな実りと海の幸にうるおう江南の地。父親を知らない少年クワンは〈海竜商会〉の統治する湾で、裕福な真珠商の甥っ子として母親と何不自由のない日々を送っていた。だが、クワンは伯父サヴァンの勧める学問には興味を持たず、湾から出ることを禁じられる生活に飽きていた。ある日、無断で都に行ったクワンは、顔見知りの少年セオがたちの悪い若者にからまれているところを見つけた。クワンの機転により二人は逃げ出すことに成功したが、あとになってクワンは大切な首飾りを無くしたことに気がついた。



『巨山外伝』にひきつづき、シリーズの前日譚。クワン王子編です。

寒さ厳しく貧しい巨山の地で孤独に育ったイェラ姫と比べると、クワン王子の育つ江南の地の豊かさが非常に対称的でした。

舞台が彩り豊かなせいか登場人物も多く、雰囲気がたいそうにぎやかです。

クワン王子その人も、見ただけではっとするような派手な少年みたいですね。
その存在感が、かれに苦難を呼び込んでくるわけで、本人にとっては災難なのでしょうが、そういうふうに生まれついた人の物語なのだなあと、思いました。

読んでいて思いだしたのはヤマトタケルのはなしですが、ヤマトタケルほど悲壮でないのはクワンが見返りに愛情を欲しているわけでなくあくまで生きのびてやるという決意の元に行動しているからでしょう。

この話の怖いところは、国が豊かである分、様々な立場のひとびとがそれぞれに思惑をもっていて、みえないところではたらくために、敵の頭を潰すことがなかなか出来ない、不可能に近いってところ。

そして、クワンに期待する人はいても、クワンに共感するひとも、クワンが共感できる人物も、いまのところいないのが、ちとつらい。

四面楚歌の後宮ではウィー王女だけが救いでしたが、認識されてないしなあ……。

ああ、だからソニンがあれほど受け入れられたのねえと、ここで思い至りました。

そうです、この話はここから本編に続くのです。

わたしとしては、ここまで読んだら本編のあとのイェラ姫とクワン王子の話を読みたいですね。

話としては、これで終わるのがきれいなんだろうけど、どうにも気になってしまいます。

シリーズ開幕編は現在新書判でも出ています。
天山の巫女ソニン1黄金の燕 (講談社ノベルス)
菅野 雪虫 釣巻 和
4061827960


前日譚、イェラ王女編。
天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘
菅野 雪虫
4062175681

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