『首斬り人の娘』

首斬り人の娘 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
オリヴァー ペチュ Oliver Potzsch 猪股 和夫
4150018642


[Amazon]

読了。


十七世紀ドイツの地方都市を舞台にした時代ミステリです。

探偵役が理性的な首斬り役人、助手役が若い洒落ものの医者、というのが目新しさ。

首斬り役人は市に任命されたいわば公務員なのに、階級的には人々から忌み嫌われる最下層。
処刑や拷問の他は、貧困地区の清掃(窓から捨てられる糞尿まみれ)も仕事のうちだったとか。

それでも苦しい暮らしの足しに、非合法な薬、といっても合法な薬もないのですが、認められた医師ではないのであまり褒められもしない薬を市民に売っていたりした模様です。

首斬り人がメインで話が進むので、舞台も下層地区がほとんどとなり、その鼻が曲がりそうな不潔さが強烈な印象を残します。

また、まだ清潔という概念がゆきわたっていなかった時代の医療の、妄想に基づいた治療方法に「これで治ったら不思議だよな」とむしろ感心してしまう場面も強烈でした。

さらに、産婆は魔女と短絡的に結論づける女性嫌悪的迷信深さと、それに基づく共感力の欠片もない男たちの弾劾に辟易。

時代的には中世は抜け出て近世に入ると思われるのですが、そういや、近世の始めは戦乱の時代で、ひとびとは戦に巻き込まれては死に、飢饉に見舞われては死に、とたいそう不安定で生きにくい時代だったな、と思いだしました。

日々の安寧を求める人々は、生活が脅かされるたびに犠牲の羊をみつけてはヒステリックに捧げていた、ということでしょうか。

こんな時代に生まれなくてよかったーと思いましたが、この時代の都市の庶民の暮らしを臨場感を持って感じられるのは、面白かったです。

例によって、ミステリとしてはどうかわたしにはわからんです←こまったやつ。

ただ、この本、タイトル詐欺ではなかろうか。
娘は完全に脇役です;

ところで。
この本は、キンドルで自費出版されたものが評判となってアマゾンが翻訳出版権を買い取り、世界的ベストセラーになったのだそうです。

へーーーー。

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