『スワロウテイル人工少女販売処』

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)
籘真 千歳 竹岡 美穂
4150310017


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読了。

原因不明の感染症により人類が存続の危険にさらされている旧東京を舞台に、人工妖精と呼ばれるアンドロイドによる連続殺人を軸に未来社会をディテール豊かに描く、繊細で残酷な未来SF。


〈種のアポトーシス〉と名付けられた不治の病の感染者を隔離するために造られた人工島〈東京特区〉で、人工妖精(フィギュア)によるパートナー殺人事件が起きた。自警団の曽田陽平の要請により現場に駆けつけた人工妖精揚羽が、犯人の瓦解した身体の微細機械からひきだせたのは「一日草」という言葉だけ。人工妖精によるパートナー殺人は半年で四件。すべての事案で犯人は揚羽により処分されているが、模倣犯とも言いがたく、リナリア柄の日傘の共通点により連続殺人であるとの印象が深まった。しかし、なぜ、どうやって? 疑問を抱えたまま保護者の元に戻った揚羽に、思いがけない出会いが待っていた。



面白かったです。

何といっても、未来の光景がイメージゆたかでクリア。
蝶がとびまわり、繊細な人工妖精たちが奉仕する、人工的ですみずみまで清潔な東京特区。
それらをつくりあげている、微細機械や人工妖精のたちの気質などの未来のテクノロジーのこまやかな設定。とくに人工妖精の気質関連が興味深かったです。

それらを描写する文章の、少し古風でありながらとても理性的かつ緻密な、独特の節回しのけれん味も作品に合っていると思います。

若い娘型の人工妖精・黒い翅の揚羽の、出来損ないである劣等感をアクアノートの任務遂行により晴らそうとする、あぶなっかしくも魅力的な姿。

揚羽の保護者で一級原形師でありながら、タバコをふかしながら世捨て人のように日々を送る、外見小学生の詩藤鏡子のギャップ満載な存在感。

鏡子のタバコ供給源・屋嘉比に、その被保護者で風気質の人工妖精・鈴蘭。

殺人事件の背景はかなり複雑でハードなのですが、登場するキャラクターたちがラノベ風に性格や容姿が立っていたおかげか、とても読みやすかったです。

そのぶん、ちょっとサービスがすぎて余分かなと感じたりする部分も無きにしもあらずでしたが、こんなに広がる話とは予想していなかったにもかかわらず、一冊にまとまったので、すごいなと思いました。

ただの殺人事件かと思っていたら、自治区と本国の政治的なバランス関係や、自治区内での不安要因にくわえて、人類の行く末まで視野に入ってくるなんて。

このスケールはSFです。興奮しました。

とくに、〈種のアポトーシス〉の最終的症状が非常に衝撃的でした。これは、嫌……。すごく嫌……。

あとは、時代が明記されていないようなのですが、人類の大きな危機が二十一世紀の出来事として記されているので、二十二世紀なのかなと推測したり。

三ツ目芋虫なんて形容される赤色機関とか、あるいは日本本国や世界の現状は、どうなっているのかなーと妄想したり。すでにかなり刺激的な情報がちりばめられてるので興味津々。

人ならぬものと、人との関係がメインなんだろうなと思いつつ、ほかの要素もいろいろと楽しめて、たいへん美味しい作品でした。

これがシリーズ開幕編とのことなので、つづきをはやく読みたいです。

いつものとおり、つづきはとうに刊行されてます。

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)
籘真 千歳
4150310467


しかし、タイトルの「人工少女販売処」というのはどこのことなのかしら。
最後までわからなかったw

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