『ブラックアウト』

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
コニー・ウィリス 松尾たいこ
4153350052


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読了。

21世紀から第二次大戦中のイギリスへと旅立った大学生たちの、トラブル続きのタイムトラベルSF。


2060年、オックスフォード大学。実用化された過去への移行技術は歴史的学術研究のために大学の史学部によって管理されていた。ところがタイムマシンは研究者や学生の利用がうなぎのぼりで、スケジュールは過密状態。第二次世界大戦を研究対象にした三人の学生たちは、度重なるスケジュールの変更の後にようやく過去へと降下したはずだったが。



面白かった……けど疲れましたw

ロンドン空襲をメインに、史学生たちがドタバタとうろつきまわるタイムトラベルものです。

空襲を勇気を持ってのりきった民衆の姿を観察したいと最中のロンドンに降下したのが、まずポリー。
彼女は百貨店に勤め先を得た後、なんとか一度現代に戻って報告しようとしますが、つねにトラブルに巻き込まれてそれが果たせないまま時間がすぎていきます。

空襲からの疎開した児童の実体をしりたいとウォリックシャーの領主館のメイドをしていたのが、メロピーことアイリーン。
空襲が始まる前に調査を終える予定だったのに、これまたトラブル続きで現代への報告ができません。

そしてドーヴァーで英雄的な働きをした一般人を目の当たりにしたいと志願したマイク。
降下した地点がどこなのか判らないまま、成り行きで行ってはならない歴史の転換点へと連れてゆかれて(と本人は思い込んで)しまいます。

肝は、このタイムトラベル装置は過去へしかいけないこと。
降下地点の起動にはさまざまな条件があること。
さらに、思い通りの場所と時間に降下できたとは限らないこと。
降下地点が作動しなくなったら、現代からの救出を待つしかなくなること。

三人は、降下した時点から現代との交信を断たれ、それぞれ事前に学んできた知識を総動員して行動することになりますが、かれらの前には次から次へとアクシデントが立ちはだかります。

空襲警報が鳴り響き、対空砲がどかんどかんと応戦している戦中で、めまぐるしく自分の状況分析や対人関係の構築に励み、なんども袋小路に踏み込んでは後戻りする若者たちの姿は、奮闘以外の何ものでもありません。

ほんとうにいろんなトラブルで、あんまりドタバタとしているのでつい笑ってしまうほど。
なりふりかまわず一生懸命なひとたちの行動って、ときに滑稽そのものなんですよね。
なので状況は深刻なのに雰囲気はコメディー。

この感じ、なにかに似ていると考えていたのですが、そうだ三谷幸喜だ、と思いつきました。
防空壕で集ったひとたちがいきなり演劇を企画しはじめるあたりなんか、とくにそんな感じです。

それから、史学生たちが出会うトラブルの中には、歴史的事実の罠がいくつかあるような気がします。
歴史的事実というのは、つまり、書き記されて公になった事柄というだけで、書かれずに忘れ去られた事柄は調べようがないわけですよね。

単に記されなかったことならわからなかったで済みますが、誤って記されたことが訂正されずに残されてる可能性もあるわけで、これはタイムトラベルにはかなり大きな問題なのではないかとおもうんだけど、どうだろう?

読みながら、歴史をもっと知っていれば、もっともっと楽しめるんじゃないかなーと思いつつ、濃密な時代の空気感と細かいところまで描かれた風俗を堪能し、史学生たちと一緒にひーひー悲鳴を上げていました。

というわけで、ドイツ軍の空襲にさらされるロンドンで、途方に暮れる史学生の運命や、いかに。

つづきは『オール・クリア』で、だそうです。
うわーーー!
終わってなかったー!!
悲鳴!!!

オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
コニー・ウィリス 松尾たいこ
4153350095

オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
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4153350109

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