『ダイナミックフィギュア 上』

ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
三島 浩司 加藤 直之
4152091959


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読了。

太陽系外からやってきた未知の敵との人類存亡を賭けた戦いに突入した日本を、ダイナミックフィギュアと呼ばれる巨大ロボットのオペレータとなった少年をメインに、周辺諸国の思惑と、体質や思想の違いによるひとびとの軋轢を群像劇として描く、近未来ロボットSF。上巻。

面白かったです。

「世界大戦前夜」と呼ばれる一触即発の状態が臨界に達する直前に飛来した、太陽系外からの未知の飛来体。

人類が傍観することしか出来ずにいるうちに地球の極軌道上に築かれていった究極的忌避感をもたらすSTPFリング。

追いかけるようにして現れ、リングを築いた陣営カラスを駆逐したクラマ。

しかしその戦いの過程で落下した物体によって壊滅的な被害を受けた四国。
生きとし生けるものが死に絶えた四国で、ぞくぞくとあらわれる敵対生物キッカイ。

国連に四国の管理譲渡を拒んで、独自に防衛戦を始めた日本の切り札は、特別攻撃機ダイナミックフィギュアと呼ばれる巨大ロボットだった。

キッカイ研究の第一人者を父親に持つ少年・栂遊星は、ダイナミックフィギュアの従系オペレータ、つまり遠隔操縦者として採用され、対キッカイ防衛戦の統括組織ボルヴェルクで出陣の日を迎えた——。

というような話です。

世界設定としては、地続きの社会で警察組織の一員としてロボットが投入される『機龍警察』より架空要素が大きく、敵の正体も意図も謎のまま、日本国内での局地戦が展開されるというあたりは『エヴァンゲリオン』に近いものがありますね。

ただ、究極的忌避感をもたらすSTPFの存在により、人類がナーバスとダルタイプという二種に分化されたこと、それによりひととひととのかかわり方がよりセンシティブに意識的に行われるようになったり、思想的な背景になったりしているのが新鮮です。

さらに、ダイナミックフィギュア出撃に極東とアメリカの五加一が承認権限をもっていたり、秘匿されている特別攻撃機の仕様がスパイ活動の標的となったりと、地続きの国際情勢も反映されています。

そんな物語の土台だけでなく、ダイナミックフィギュアの操縦シーンと当面の敵であるキッカイとの戦闘がすごくスリリング。
これぞロボット物の醍醐味といわんばかりに、スピード感躍動感あふれる描写が楽しいです。
それ以前に、キッカイと生身の人間による不利な戦闘が描かれているので、より鮮やかさが際立つのですね。
キッカイの生態情報や、その特異な存在を四国に封じ込めておくための作戦など、いままでにないような展開でわくわくしました。

作品世界のための造語も独特なイメージ。
四国をキッカイの牢獄に見立ててのものだと思われますが、この戦闘がけして明るいものではないことをつねに暗示しているよう。

造語といえば、主役・栂遊星をはじめ、登場人物もかなりユニークなネーミングで、読みを覚えるのにちと苦労しました。性格はそれぞれ個性的ながらそれほど特殊ではないので、司令船パノプティコンの雰囲気などはイメージしやすかったですが。

というか、キャラクターの配置なんかはエヴァを彷彿とさせるところがかなりありますね。
(栂遊星が協調性のある、ひとびとを穏やかに結びつけるような保守的な性質だったり、ともちろん違いはありますが。)

特に存在感が強烈なのはパノプティコンの船長で、限定的に要撃部隊の全権を統括することになる、是沢銀路司令。

なんですか、このひとの戦闘開始を宣言する壮大すぎる長台詞は!

最初はびっくりして一歩引いてしまいましたが、読み進むうちにどんどんノリノリになってしまって、出てくるたびに「おお!」とか「上手い!」とか、緊張とともに高揚感に包まれていく隊員たちとおんなじ気持ちになってしまいました。

生まれついての熱血カリスマ総司令て感じですねー。

陶然としながら、登場人物紹介の年齢を見て「うわっ」と悲鳴を上げたわたくしです;

あとは、フタナワーフの調査隊・白き蝉の佐々隊員もものすごく気になります。

SFとして、謀略物として、ロボット物として、いろんな楽しみ方のできるお話だなーと思います。いまのところ。

というわけで、はやくつづきが読みたいです。

わたしは単行本を読みましたが、すでに文庫化されてますので。

ダイナミックフィギュア(上) (ハヤカワ文庫JA)
三島 浩司
4150311110

ダイナミックフィギュア(下) (ハヤカワ文庫JA)
三島 浩司
4150311129

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