『奇譚を売る店』

奇譚を売る店
芦辺 拓
4334928897

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読了。

古本屋で買ってしまった本(あるいは資料)のために、思わぬ事態に巻き込まれる作家の災難を描く、怪奇不条理小説連作?短編集。

収録作品は以下の通りです。


『帝都脳病院入院案内』
『這い寄る影』
『こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻』
『青髯城殺人事件 映画化関係綴』
『時の劇場・前後篇』
『奇譚を売る店』



面白かったー。

テイストは古式ゆかしい昭和日本の推理小説。
精神病院から少年探偵団、華やかなりし頃の銀幕の裏話、名のみ知られた奇怪な大河小説まで、古本屋でうっかり手に入れた本がもたらす世にも怪奇な物語が連綿とつづられています。

読みながら脳裏に浮かんでたのは高橋葉介『夢幻紳士』です。
じつは、わたし昭和の推理小説をほとんど読んでこなかったので、江戸川乱歩の少年探偵団ですら部外者として想像するしかないのですけど、『夢幻紳士』だけは大好きなのです。

この本のまとうものは、あのどうにも怪しく不条理なモノクロームの世界、に似ている気がします。

だからお話はたいてい主役である「わたし」のお約束パターンで終わるわけですが。

なんと、この話、ひとつおわってもまた次の話が「わたし」で始まるじゃないですか。

いったい、この「わたし」は何者なんだろう、この話じつは並行世界の話なのだろうか、いや、でてくる古本屋は同じとは限らないし、と短編の枠外のところでも謎が進行するあたりが興味深かったです。

それにしても、古本屋を出て「わたし」がつぶやく


 ——また買ってしまった。



のなんと身につまされることでしょう。
本屋に入ると何かしら購入して出てきてしまう本読みの人なら、深く感情移入できるのではないかと思う次第です。

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