『スロウハイツの神様』上下巻

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)
辻村 深月
4061825062


[Amazon]

読了。

クリエイターをめざす若者たちが共同生活をするスロウハイツを舞台にした青春ミステリ小説。

すごく面白かったー。
事件が起きて、それを解決するというスタンダードな形のミステリではなく、登場人物の複数視点でそれぞれの死角になった部分が謎になるタイプのお話です。

新進気鋭の女性脚本家、赤羽環の誘いによって古い旅館を改造した下宿スロウハイツで暮らすことになった若者たち。

漫画家を目指している狩野壮太。
映画監督修業中の長野正義。
正義の彼女で絵を描いている森永すみれ。
環の長年の親友だった円屋伸一。

そしてかれらに多大な影響を与えてきた若きベストセラー作家チヨダ・コーキ。

クリエイターを目指すものにとっての憧れであり目標である「神様」のようなコーキを間近にして、懸命に努力し、焦り、苦悩する若者たちのかかわり合いと心情が、鋭くかつセンシティヴに描かれていて、読んでいてぐっとひきこまれました。

自分は何者かになりたい、なりたいから努力している、けれど本当になれるのだろうか。
そんな中途半端な境遇にあるお互いに共感しつつ、それぞれに事情も資質も異なる人間だから、すべてを完全にわかりあえることも、受け入れられることもない。

そして、最後のところでは自分だけの何かをつかまなければ先へは行けない。

謎はあちこちにちりばめられていますが、話はとりあえず謎を提示したままで進んでいきます。

視点が切り替わるたびに、あらたな人物によりあらたな情報が得られる、そんなかんじ。

上巻の終わりで初めて事件らしい事件が起きますが、そこまではふつうに青春群像劇として読んでいたくらいです。

しかし、ラストの大どんでん返しには参った!
初めからわかってたはずなのに、そこにこんな関わりが秘められていたとは思わなかった!
思わず上巻から読み返したくなりました!

あんまり書くとネタバレなんでこの辺でやめときます。

ときにトゲも毒もある後味の悪い話になりそうな話を、ほんわりとした存在感で救ってくれているチヨダ・コーキことコウちゃんが、一番リアリティはないけれど一番この話で重要な人物でした。

なにしろ、神様なんだもんねえ。
神様にぴったり張り付いてる編集者の黒木さんは悪魔かもwww

環と桃花ちゃん姉妹のエピソードには泣けました。本当に泣けました。

スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
辻村 深月
4061825127


わたしは新書で読みましたが、とうに文庫版が出ています。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
辻村 深月
406276556X

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
辻村 深月
4062765578

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