『ゼラニウムの庭』

ゼラニウムの庭
大島 真寿美
4591130754


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読了。

明治末期に生まれた祖母の昔語りを、作家になった孫娘が書き留めた手記、という形で表される、家族の秘められた謎と歴史の物語。

面白かった、と同時になんともいえない読後感の残るお話でした。

語り手・るみ子が作家になるらしいと知った祖母・豊世が、「るるちゃんは書く人としてうまれたのだから、このことを記しておいて欲しい」と言って語り出した、彼女の一生。

それは、戦前からつづくある一家の歴史であるとともに、一家に生まれた双子の娘、豊世と嘉栄の、不思議で恐ろしく悩ましい、隠された物語だった。

豊世の話に自分が見聞きしてきた事実を照らし合わせ、推測を交えながらるみ子はつづり出す。
だれにも読ませる予定のない、ただ書きおえることだけを目的とした、長い記録を。


——というようなお話です。

時代が時代なので、途中に第二次世界大戦が挟まり、おさだまりの苦労話なども挟まってくるのですが、それよりも双子にあたえられた境遇の違いがドラマティックかつ息苦しいまでにリアルで、心理的なサスペンスのような雰囲気を醸し出しています。

設定はとっぴだけれど、ディテールのこまやかさと丁寧さ、こころのひだをなぞるような描写が話を絵空事と感じさせません。

架空の「もし」を設定して話を展開させるということでいうならば、この話はSFに分類されるのだろうか。
わたしとしてはファンタジーとは言いがたい。
前半は伝奇物として読めるけれども、最後まで読むとそうとも言いきれない。
ふしぎな物語だなあと思いました。

嘉栄という存在に、豊世をふくむ一般人がいだく複雑な感情がこの作品の肝かなー。

しかし、後ろ半分を読むとこれが、どうもわたしには萩尾望都の某作品へのオマージュとしか思えないんですよね。
あとは『メトセラの子ら』とかが思い浮かびました。

もしかして、作者さんはこちらを先に構想していたのかもしれない、なんて勝手に考えてみたり、しました。

そのせいで、なんか話の前半と後半で受ける印象ががらっと変わってしまったのですが。

着地点がかなり俗世っぽいのが、わたしとしてはちと残念でしたが、さばさばしていて、これはこれでよかったのかもしれないです。

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