『馬の世界史』

馬の世界史 (講談社現代新書)
本村 凌二
4061495623


読了。

馬好きの西洋古代史の学者が多様な資料と最新の研究をもとに論じる、馬を通してみた世界の歴史。

たいへん面白かったです。

馬によってもたらされた速度という事象が人類史に与えたインパクトと、馬とともに生活し移動する騎馬遊牧民が世界の版図に与えつづける影響力の双方に新鮮な驚きを感じました。

文字を持たず歴史を残さなかった騎馬遊牧民の世界が、周辺諸国の資料からしだいにあきらかになりつつある、というあたりがとくに面白かった。

なんだか、世界は騎馬遊牧民がエネルギー源となって変動していくみたいですね。

馬がもたらす変革と、馬を利用しつくしていく人間の姿が、たいそう興味深かったです。

いまやすっかりスポーツの世界に限定されてしまった馬の利用ですが、そのスポーツの起源などにも、へえええと驚かされました。

そしてなつかしの競馬シリーズなど思い出してみたり。

コンパクトにまとまってますが、中身のとても濃い、まさに「世界史」とよべる内容でした。

目次は以下に。


プロローグ——もし馬がいなかったら、二一世紀はまだ古代だった

1章 人類の友
 人間に飼い慣らされる動物の条件とは/馬は人間に飼い慣らされるべく進化してきた?/野生の馬はなぜ衰退したか/シマウマを飼った男/家畜化の始まり

2章 馬と文明世界——戦車の誕生
 最初に馬に乗った人間はなにを思ったか/馬に荷車を引かせる/「山のロバ」と「砂漠のロバ」/戦車の誕生/戦車武人の登場/「速度」という観念が変えたもの/東アジアの戦車

3章 ユーラシアの騎馬遊牧民と世界帝国
 I 西方ユーラシア
  騎乗の普及/古代人はどのように馬に乗っていたか/最古の騎馬遊牧民キンメリア人/ヘロドトスの描いたスキタイ人/スキタイ系文化はどこから来たのか/アッシリア帝国と騎馬軍団/アッシリア馬とエジプト馬/ペルシア帝国/スキタイ北伐作戦の失敗/「王の道」
II 東方ユーラシア
  東方の騎馬遊牧民/殷と周の対決/戦車から騎兵へ/秦の由来/司馬遷の描いた騎馬遊牧民/騎馬遊牧民と世界帝国のダイナミズム/汗血馬の伝説

4章 ポセイドンの変身——古代地中海世界の近代性,ギリシアで戦車は用いられたか/オリンピックの花形、戦車競争/なぜ「馬の神」は「海の神」となったか/ギリシア人と騎馬/アレクサンドロスの愛馬/ローマ軍と騎兵隊/「パンとサーカス」の世界/競走馬の育成/古代地中海世界の近代性とはなにか/馬と海と「海域世界」

〈補論〉馬なき古代文明——アメリカ

5章 馬駆ける中央ユーラシア
 ゲルマン民族大移動とフン族の脅威/ローマ帝国の解体/フン族とはどんな人々か/四つの自然区分/「オアシスの道」シルクロード/騎馬遊牧民の馬/夷狄は蛮族か?/突厥の大遊牧帝国

6章 アラブ馬とイスラム世界
 アラブ馬の成立/ベドウィンがもたらした馬/馬は「至上の祝福」/アラビア半島はなぜ名馬を生んだか/十字軍の重馬/軽装のトルコ騎兵

7章 ヨーロッパ中世世界と馬
 ビザンツ帝国の戦車競争/イスラム侵攻と騎士団の出現/騎士の理想の馬/英雄エル・シッドの馬バエビカ/十字軍が伝えたオリエントの馬/軍用馬を育てる/農耕馬の登場

8章 モンゴル帝国とユーラシアの動揺
 遊牧国家ウイグル/広がる遊牧国家のシステム/チンギス・ハンとモンゴル帝国/高度に組織化された編隊/「タタールの平和」/マルコ・ポーロのみたモンゴルの馬/モンゴルが「世界史」をもたらした/モンゴルを離れて/「南船北馬」/朝鮮半島と日本の馬

9章 火砲と海の時代——近代世界における馬
 ルネッサンスと獣医学への関心/アメリカ新大陸にわたった馬/馬の与えた衝撃/ヨーロッパの軍事革命の波間で/馬車の時代/小説が描いた馬車の旅

10章 馬とスポーツ
 狐狩りから障害競争へ/馬産への情熱/サラブレッドの誕生/近代競馬の成立/世界最強馬の追求

エピローグ——われわれは歴史の負債を返済しただろうか
あとがき
参考文献



ちなみに、つい先日文庫化されています。
馬の世界史 (中公文庫)
本村 凌二
4122058724

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