『開かせていただき光栄です』

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
皆川 博子 佳嶋
4152092270


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読了。


十八世紀ロンドンの解剖学教室を舞台に、発見されたあるはずのない屍体の謎を追う、時代ミステリ。

面白かったですー。

外科医ダニエルの解剖学教室ではつねに教材が不足ぎみ。
ようやく手に入れた非合法な屍体を前にして外科医ダニエルと弟子たちが待望の解剖を始めた矢先、治安判事の手足ボウ・ストリート・ランナーズが墓泥棒の自白をもとに押し入ってきた。
なんとか難を逃れて隠した屍体をとりだそうとしたとき、なぜか屍体は三体に増えていた。
四肢を切断された少年と顔を潰された男という身元不明の屍体の謎を解き明かすため、治安判事フィールディングはダニエルと弟子たちに協力を依頼する——。

増えていく屍体という不謹慎ながら可笑しみをさそう展開に、個性のはっきりした若者たちのやりとり、時代背景や風俗文化をていねいに描いた文章で、日本人が書いた翻訳ミステリのような趣です。

まだスコットランドヤードのない時代のロンドンの治安は、治安判事が自腹を切ってまもっていたのですねえ。

盲目の治安判事の年輪を重ねた思慮深さとふところのひろさ、若き女性でありながら助手をつとめるアン=シャーリー・モア(!)のいかにも生真面目で気の強そうな雰囲気、アンを補佐するデニスの地味な存在感が楽しいです。

しかし、なんといってもこの本は解剖学教室の弟子たちのわやわやした関係が読みどころだと、わたしが勝手に申し上げます。

とくに、かれらのなかで自然に頭角を現してくる容姿端麗エドと、病弱な細密画家ナイジェルのコンビです。

強引にいうなら、これは萩尾望都の『小鳥の巣』なのです。
ほかの方がどうなのかはわかりません、おそらく違うと思いますが、わたしはそう読んでしまいました。

宣言したらほんとにそうとしか思えなくなってきた;

ミステリとしてどうなのかは、いつものようにわたしには判断できませんが、ラストでは「やられた!」と心の中で思いました。

途中、いろいろと考えていたことはおおむね当たっていたけど、真相まではたどり着けませんでしたね……。まあ、いつものことですが。

ダニエル先生の容姿に似合わぬ人のよさにかかわらず、その兄ロバートのあまりにもひどい人物像がすこしだけ気になりましたけど、エドとナイジェルふたりのまとう不思議な空気に酔っているうちにスルーすることにしました。

ひとつの作品として、見事だなと思います。

解剖学教室の解剖ソングは素敵です。

単行本で読みましたが、文庫でも出ています。書き下ろしの短編が追加収録されているらしい。読みたい……。

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)
皆川 博子
4150311293


さらにもうじき続編が出るそうです。どんな話なんだろう、どきわく。
アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)
皆川 博子
4152094222

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