『盤上の夜』

盤上の夜 (創元日本SF叢書)
宮内 悠介
4488018157


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読了。

囲碁、将棋、麻雀といったボードゲームを題材にした、いろんな意味でハードなSF連作短編集。


盤上の夜
人間の王
清められた卓
象を飛ばした王子
千年の虚空
原爆の局



これは読んでて「凄い!」と思いました。
面白いとかたのしいとかではなく、「凄い」。

話の設定がまず現実的なのに暴力的でもあり、しかしその暴力は必然なる前提として背景にあるので、前面に出てくることはなく、あくまでもSF的発想の土台として存在しているところが「凄い」。

さらに、ボードゲームと、そのプロを含む専門家たちの、プレイによって三次元的にも四次元的にも立ち現れる別の世界の存在が「凄い」。

はじめはよくスポーツのプレイ中に現れるゾーンのことを、ボードゲームに置き換えて書いているのかなと思いましたが、そこからきわめてSF的な飛び方をして、プレイを通してプレイヤーのたどり着くもうひとつの世界を描いているのがわかってきて「凄い!」と唸りました。

人間が世界を理解するための指標は信仰や科学などいくつかありますが、ゲームのルールもまたそのひとつとなりうるんだなあ……。

囲碁、将棋、麻雀、チェッカーと、とても専門的な部分にまで踏み込んだお話ばかりなので、知識のないわたしには正直よく判らない部分がたくさんありましたが、ふたりのプレイヤーが知力体力を尽くして対峙する盤上に、その対戦がわかるひとにだけ見える、とても狭いけれど奥深く底知れない世界が生まれていることに、ちょっと感動しました。

読んでからもいろいろと考えさせられました。
この感想がその証拠です。

しかし、凄いと思いはしても好きだとは思えなかった。
別世界へと到達するプレイヤーが払う犠牲があまりにも大きすぎて、その部分がどうにも日々平穏をもとめるわたしには刺激が強すぎました。

かれらの見いだすのは、宗教や、もっとおおきくひらかれている科学なんかとは違う、人を選ぶ閉じられた世界です。

たどり着いたのは社会からはじき出されたために居場所を求めて、ということもあるのでしょうが。

このあたりは、異界の見える狭義のファンタジーなんかと似ている気がしますね。

日常を逸脱したがゆえにみえてくる世界という点で。

小心者のわたしには平和な日常の方がありがたいです。

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